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2013年1月24日 (木)

【ボードゲームレビュー】ハードオブクラウン ★★☆☆

Heartofcrown_01


評価:★★☆☆[2/4](4人プレイでの評価です)

プレイ人数:2~4人

プレイ時間:40分ぐらい


ハートオブクラウンへの愛着という問題。

簡単なゲームの流れ


  • ①各自が10枚一組のデッキからスタートする。
  • ②デッキから5枚を取り、手札を作る。
  • ③手札にあるお金やアクションを使って、カードを購入したり、アクションを実施する。
  • ④ある程度デッキが構築できたら、お姫様カードを買って、王位後継者として姫を擁立する。
  • ⑤いち早く、自分が擁立した姫に継承権を20ポイント捧げることができれば勝利。

Heartofcrown_02


ゲームの総評


ドミニオンクローンだとは聞いていたけれど、オリジナル要素が素晴らしいデッキ構築型ゲームだった、と思う。他のドミニオン派生ゲームをそれほどプレイしたことがないので、単純に比較するだけの知識がない。しかし、これ凄く出来がいいんじゃないかと思った。

遊星からのフリーキック」というサイトで、ハートオブクラウンについて「本家より強いカードがあるというのは、それだけ、目標をぶれずに高い意識で作られたというように感じる」と述べられている。この指摘を目にした時、イタリア料理で有名な落合務シェフが修行中の弟子に対して似たようなことを言っていたのを思い出す。「どうせ味付けで失敗するなら、味が薄くて、というよりも、しょっぱいぐらいで失敗する方がいい」。うろ覚えなのだが、料理は単に食えるものを出すことではないという心意気において、共通点があるように思う。

個人的には、中盤以降に姫を擁立してから、みんなの視点がこれまでと微妙に変わる点、これが面白い。フェーズが変わるゲームというのは大変好みなので、この点が特に面白かった。

また、常々、ドミニオンではアクションポイントを指折り記憶しておくのが煩わしかった。そのため、この矢印でつなげていく、というのも良い改良点だ。こういう1つの方向に思いきり舵を切ったシステムというのは、素敵だ。

(テレビゲームの例で申し訳ないのだが、「GTA」に対する「セインツ・ロウ」みたいだとも思った。基本アイデアは借り物だけど、本家とは違うトータルで行くべき方向・焦点をぶれさせずに完成させた印象。)

イラストが個人的にあまり興味を持てないタイプだという点を除けば、あらゆる点で自分好みで高水準・高品質なゲームだと感じた。

……そう、最初にこのゲームをプレイした僕は「イラストやテーマがちょっとなぁ」と思った。で、その時の僕の頭の中には、当然、ドミニオンのイラストやテーマがあったわけで、ドミニオンと比べると、とても高い「壁」をハートオブクラウンから感じたのだ。なんというか、「ちょっと……、この世界は……いいです……」みたいな。

しかし、しばらく考えていて思ったのだが、ドミニオンだってよっぽど高い「壁」を持っているような気がする。ドミニオンは明らかに中世ファンタジー世界をテーマにしている。魔女や冒険者、玉座、鍛冶屋、錬金術。こうした要素は、「たまたま」自分にとって馴染みのあるアイテムだっただけで、多くの普通(?)の人にとっては、極めてマニアックな世界に映るのではないかと。それこそ僕がハートオブクラウンを見るように、ドミニオンの世界をマニアックな世界だと見る人が相当数いるのではないか。

ドミニオンについて「ソロプレイ感」が語られることがあるが、これは当然メカニクス的な要因に依るところが大きいのだろう。しかし、もしかしたらメカニクスだけでなく、テーマ的にそう感じさせているケースが結構あるんじゃないかと思った。

この前のゲーム会で、気遣いと優しさを持ち、笑顔でドミニオンに付き合ってくれたあの娘は、もしかしたらドミニオンのテーマについて「よくわかんねーw」、アクションカードのコンボをつなげる僕を見て「必死だなーww」と思っていたかもしれない。(フィクションです)

そして、ドミニオンへの興味というのは、この中世ファンタジー世界への愛着が支えている部分が少なくないと思う。(もちろん競技としてプレイするレベルまで行くとそうでもないだろうし、ゲームデザインする人であれば全く違って見えているのだろうけれど。)

そう考えると、このハートオブクラウンというのは、その仕組みとテーマの両方の構造において、ドミニオンの嫡子と言えるのかもしれない。

ドミニオンという大ヒットタイトルが出たことで、ドイツボードゲームに注目がものすごく集まったという側面はきっとあったのだろう。ハートオブクラウンによってボードゲームの世界に導かれた人も少なくないかもしれない。しかし、こうした愛着の持てる世界観を武器にしたデッキ構築型ゲームの妙な魅力が、僕は少しだけ怖いような気がするのだ。

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