« 2013年2月 | トップページ | 2013年4月 »

2013年3月

2013年3月29日 (金)

【ダイジェスト第2弾】10分で分かる「人狼~嘘つきは誰だ?~」フジテレビ系3/27放映【感想とまとめ】

以前に、ニコニコ生放送で実施された「 将棋棋士の人狼 」という番組の ダイジェスト記事 を書いた。今回の記事はダイジェスト第2弾と銘打ち、3/27深夜にフジテレビ系で放映された「 人狼~嘘つきは誰だ? 」の内容をまとめたものである。

今回のテレビ放送の人狼で使われた役職は以下の4つ。
市民 : 人間。いわゆる村人。
人狼 : 毎夜人間を襲撃。お互いに誰が人狼か知っている。
占い師: 毎夜、一人を占い、人狼か人間かを知ることができる。
騎士: 毎夜、一人を選んで、人狼の襲撃から守ることができる。いわゆる狩人。

※狂人(多重人格)、霊媒師、共有者はなし。


出演者は以下の8名。以下、敬称略で書かせていただく。
小木博昭 (おぎやはぎ)
矢作兼 (おぎやはぎ)
後藤輝基 (フットボールアワー)
吉木りさ
光浦靖子
クリス松村
杉村太蔵
狩野英孝

ダイジェストは、僕自身の印象によって省略しながら書いているため、重要なシーンが抜け落ちているところもあるかもしれない。その点はご容赦願いたい。また誤りなどがあれば是非指摘いただければと思う。なお、本放送を録画している方、 未放送ゲーム をYoutubeで見ていない方は、できれば番組やYoutubeを先に見ていただいた方がいいと思う。以下の記事はネタバレ満載である。


※関連リンク




◆第1バトル

主に活躍した人およびその役職(キャスト)は以下の通り。
光浦: 人狼
小木: 人狼
後藤: 占い師
杉村: 市民

ゲームの流れ:

役職決めの段階で、いきなり光浦の表情が怪しい。さっそく全員から疑いの目を向けられてしまう。矢作の読みがとても鋭く、もう一人の人狼である小木も同時に疑われる。

しかし、ここで伏兵が現れる。おそらく多くの視聴者から心配されていたであろう杉村太蔵。期待通り、 市民のくせに物凄く怪しい 。「処刑したくなる奴」というのは実際に人狼をやると経験することだし、テレビらしくそれが面白おかしくネタにされている。

杉村が冷静にしていればいいものを、異常に村人を主張する。一斉にみんなの疑いが光浦から杉村にシフトしてしまう。ほくそ笑む光浦。なんというか「バカは正直者だ」と皆が思っているので、この必死さが(人狼としての)正直さの現れのように見えてしまう。

順当に杉村が処刑(番組用語では追放)される。別室で「ほら俺の言った通りじゃないか、みんな見る目ないなー」という杉村の憤怒の言葉は鏡のように、彼は処刑されるべくして処刑されたのだという事実を示す。

そして1日目の夜のターンでなんと騎士の狩野が襲撃を受ける。市民を守る騎士がいなくなったことで、人狼チームが俄然有利となる。狩野は、役に立たなかったこと自体がウケるという見事な役回り。

2日目。占い師の後藤は小木が人狼であることを知る。しかし 占い師をカミングアウト(以下、CO)していいものか躊躇 してしまう。小木を必死に攻撃するが、そのことが裏目に出る。

小木はその状況を利用して、後藤を人狼呼ばわり。攻撃的な後藤がむしろ疑われ始める。しかし、それでも占い師COできない後藤。その気持ちは痛いほどわかる。かつて初めて役職持ちになった時を思い出す。

結局投票の末、後藤が処刑。最後まで占い師COはなかった。騎士がいないため夜の襲撃で人狼と市民が確実に同数となることから、人狼側の勝利が決定した。

結果: 人狼勝利

感想: やっぱり人狼は観てて面白い。人狼というゲームと関係なく、小木、矢作そして後藤の的確なツッコミも面白い。ハイライトは試合終了後の狩野の「騎士はオレです」だろう。なんかウケる。



◆第2バトル

主に活躍した人およびその役職(キャスト)は以下の通り。
吉木: 人狼
杉村: 人狼
後藤: 市民
狩野: 占い師
光浦: 騎士

ゲームの流れ:

カワイイ女性が人狼というパターン。やはり人狼の醍醐味の一つは女性人狼のパターンだ。「実は悪い女」というモチーフは、永遠のテーマだろう。

しかし、この試合でも矢作の鋭い読みにより、吉木が早速疑われる。やはり芸能人。女性だから疑われないなどという生易しさがない。

疑われる 人狼吉木がとった戦略が役職騙り 。しかしなんの役職かは明かさない。手探り感が初々しい。

しかしこれが功を奏して、処刑を回避することに。対抗して誰もCOしなかったからか。代わりに処刑されたのがなんと後藤。少し噛みつきすぎたかもしれない。まさかの逆転処刑。なんか後藤の持つこの常に処刑される安定感はなんなんだろうか。

そして夜が明け、2日目の朝が訪れる。なんと人狼の襲撃が失敗。これは手痛い。光浦騎士の見事な護衛により襲撃は失敗。杉村・吉木の人狼も内心の思いは裏腹にその護衛を讃える。

番組公式Twitter によると、夜ターンは、全員が同時に占い対象や襲撃対象を選定しているのではなく、各自順番に選択がなされているとのこと。そして、襲撃対象は2番目に順番が回ってきた人狼に決定権があるらしい(2番目の人狼は、1番目の人狼の襲撃対象が誰かは分かる)。※該当の公式ツイートはこちら

そしてここまで黙っていた占い師の狩野がCO。ドヤ顔うざいw。そしてなんと光浦の占い結果を告げ、人間であると宣言する。なんだよ、その占い対象、勘悪いなーと思ったが、これがその後の展開を制する鍵となった。

前日に曖昧な役職騙りをした吉木がその役職を明かす。なんと騎士だという!多くの人狼経験者はびっくりしただろう。これは難しい。理屈をこね繰り回すにはあまりに難しい騎士騙り。

何より1人占い師の狩野が光浦を人間だと宣言している。これは圧倒的に人狼側が不利。

そして、本物の騎士である光浦が早速対抗してCO。経験者の小木・矢作もここで吉木の人狼を確信。そしてあの杉村太蔵がなんと吉木を人狼呼ばわり!見事な身内切り。おー、杉村太蔵、ちゃんと人狼を理解しているじゃないか。この試合でのハイライトはここだろう。

そして処刑対象の投票。吉木の弁解は空を切る感じ。そしてなんとここで杉村太蔵(なんかフルネームで書きたくなる)が痛恨のミスをする。なんと狩野に対して処刑投票してしまう!

はっ?と多くの視聴者も思っただろう。やっぱり杉村は人狼を理解していなかったか!これまでほとんど疑われていなかった杉村がここで明確に疑われる。というか人狼を確信されてしまう。

そして吉木が処刑。そしてなんとその夜の襲撃がまたも失敗する。騎士の2回連続護衛成功という奇跡。というよりも人狼杉村がバカすぎる。

3日目。狩野による占い結果により杉村が人狼であると伝えられる。当然、杉村が処刑され、市民側の勝利が確定した。

結果:市民勝利。

感想: 途中までかなり面白かったが、終盤がなんとも肩すかしな展開。人狼がお粗末だとやはりさびしい。いずれにしろ芸人さんの仕事っぷりが光る。人狼としての面白さより、従来の芸人さんが盛り上げるテレビとしての面白さが勝っている感じの試合だった。



◆第3バトル (テレビ未放送)

本試合はテレビで未放送であり、Youtubeのコチラで公開されている。役職は未公開で視聴者も推理を楽しめる趣向になっている。(なので先にYoutubeを見ることをお勧めします)

ゲームの流れ:

最初の役職決めの段階では、なかなか誰が人狼か分からない。

しかし、なんと いきなり杉村太蔵が占い師CO。 おおー。そして対抗するCOはなし。ほぼ杉村の占い師が確定という感じ。しかし、もう一人(人狼か本物の占い師)も押し黙っているだけかもしれない、杉村は人狼かもしれないという疑念も残る。

杉村の必死の訴えを聞くと、本物の占い師のようにも思える。これが人狼だとしても、決して上手いとも言えないのが逆に面白い。

そして後藤が杉村に食って掛かる。本物としか思えない杉村をみんなが信じたくなくてウケル。しゃべるバカは面白い。杉村の鬱陶しいキャラが確立していく。

しかし杉村を疑う合理的な理由が存在しない。結局議論は収束しないまま投票時間になる。そして何とここであまりマークされていなかった矢作に処刑投票が集中する。これ、見ている時はとても納得感があった。なんというか、これまでとても積極的に真実追究にこだわっていた矢作が、この試合では急にトーンダウンした印象があったのだ。

あー、これは確かに人狼かもな、と思いつつもなかなか確信は持てない。結局静かに矢作が処刑されていった。

そして1日目の夜。襲撃は狩野に対して実行される。これは適切な襲撃。前日の時点でほとんど疑われていない狩野が消えた。

そして2日目の朝。占い結果を急かされる杉村の返答は「クリスは人狼ではない」というもの。はっ?なんでクリス占うんだよ!と集中砲火。そう前日に杉村占い師に疑いを持ち続けた後藤を占うとみんなが思っていた。でも、このバカさ加減が本物くさい。でも、やっぱり人狼?迷う。

しかし、杉村の「クリス人間宣言」により、人狼が絞られる。クリスが人間に確定されたことの意味は大きかったのかもしれない。結構クリスの発言は空気を変える。小木による騎士COもあり、後藤への処刑票が集中してしまう。なぜここで後藤に集中したのかが今一つ視聴者には伝わってこないが、結局後藤が処刑される。(今回全部のゲームで後藤は処刑されている。かっこいい)

果たして、市民側の勝利が確定した。

結果: 市民勝利

感想: 最後を見るとあっけない終わりのように思えるが、自分の推理に確信を持てなくて面白かった。人数が少なく試合時間が短いと、役職が分からない方が面白いような気もする。 ワンナイト人狼 なら、役職を伏せて観た方が面白いのと似ているかもしれない。


結局、未放送ゲームの役職は以下の通り。
矢作: 人狼
後藤: 人狼
杉村: 占い師
小木: 騎士
光浦: 市民
吉木: 市民
クリス: 市民
狩野: 市民



全体の感想: なかなか面白かったが、 淡白な展開が多かった ように思う。ただ、これは「分かりやすさ」をとても意識しているからだろう。やはりテレビの人の「多くの人に分かること」へのこだわりは凄まじいものがある。百万単位を相手にしているメディアらしい番組作りだと思う。ニコニコ生放送と比べると、単品の商品としての クオリティは圧倒的に高い。

しかしだ。僕は正直言って、ニコニコ生放送の「 将棋棋士の人狼 」の方が面白かった。あちらの方が経験者にとってはずっと面白かった。あの試合でさえ、人狼のベテランはフラストレーションが溜まったであろうが。

棋士人狼の方が面白かった理由はいくつかある。ここでは3つ挙げたい。

1.理解している人が活躍した
棋士人狼の場合、中田7段や村中6段など人狼のセオリーを理解している人が活躍した面白さがあった。そしてロジック展開を味わう面白さがあった。やはりこの醍醐味は今回のテレビ放送版にはあまりなかった。

2.解説があった
棋士人狼ではひろゆきによる解説があった。解説の妥当性云々はさておき、解説が経験者の溜飲を下げる、ということはある。また「この人は何を考えているのか」ということを理解する喜びが人狼観戦にはある。この部分を単にナレーションで補うよりもリアルタイムに伝える実況者兼解説者のような存在があった方が良いように思う。スポーツ観戦の実況が視聴者の気持ちを盛り上げるのと同じだと思う。

3.人数、役職が少ない
人狼は実は答えを探るゲームじゃない。 人狼チームが如何に答えが出るのを引き延ばせるかというゲーム なのだ。だから人数や役職を増やすことで、そのゲーム性を継続しやすくなる。誰が人狼であるか分かるよりも、誰が人狼か分からなくなった、ということに面白みがある。やはり8人で霊媒師や狂人なし、というのは展開が淡白になってしまう。

以上3点を挙げたが、これらの課題は今回のフジテレビ人狼を作ったスタッフの方々は十分過ぎるくらいに理解していると思う。だから、意識的にこのような番組を作ったはずだろうし、ちゃんと面白い番組だったと僕は思う。人狼がこれまで中々テレビにならなかった理由が改めて明確になった、というところだろう。

しかし、視聴者には経験値が溜まっていく。それを踏まえたテレビ番組作りにも、きっとノウハウがあるだろう。今後に期待したいし、是非継続して人狼を放送してほしいと思う。

2013年3月27日 (水)

【日記】ライナー・クニツィアにサインを貰った日

2013年3月23日。お昼。水道橋駅東口近くのハンバーガー屋「I-Kousya(アイコウシャ)」にて。

Ikousya_01


妻「で、なんか喋ったの?」
僕「うーん。いや、特には。"Thank you"ぐらいは言ったけど」
妻「せっかくなんだから『あなたの作品で一番好きなのは○○です』ぐらい言えばいいのに」
僕「うん。言いたかったんだけど……。クニツィアの作品やったことないんだよね」
妻「え!?そうなの?あかんじゃん」
僕「えへー、そうなんだよねー。正確に言うと、iPhone版ではやったことあるんだけどさ」
妻「……。不思議だねー」
僕「うん。ホント。わざわざサイン貰いに来るんだからね……。ところでさ、やっぱりFire Houseのハンバーガーの方が……。」
妻「うん。まあね。でも、こっちの方がちょっと安いね」
僕「そうね。まあ、おいしいもんねぇ、ここも」

Ikousya_02




3月23日の午前10時。この日、僕は水道橋にあるメビウスゲームズというボードゲーム屋さんに向かった。

ドイツのボードゲーム界において、最も有名なゲーム製作者(ゲームデザイナー)と言っても過言ではないライナー・クニツィア氏。来日した氏のサイン会がそのお店であるからだ。当日購入したゲームについて、その場でクニツィア氏本人にサインしてもらえるという。折角の機会と思い、水道橋に馳せ参じた次第だ。

以前からワクワクしながらこの日を待っていたが、自分でもなぜこんなに楽しみにしていたのかよく分からない。何と言っても、半年前までは名前すら知らなかった人なのだ。これまで芸能人はおろか、作家や著名人のサインなども貰ったことがない。そもそも貰おうと思ったことさえほとんどないのだ。

まあ、ハマりはじめの勢いというのはあるのだろうが、このイベントにワクワクしながら当日を迎えた。

JR水道橋駅の東口から出て、神田川を北側に渡り、左手に進むと目的のメビウスゲームズというお店はある。梅澤ビルという雑居ビルの5Fの小さな店舗がそれだ。

半年前に初めてこの店に来たとき、僕は「ローゼンケーニッヒ」を購入した。折角来店したんだから、という適当な理由で購入したのだが、なかなかこれが面白いゲームだった。その時に店のオヤジさんから「ストーンエイジ」を薦められたが未だに購入できていない。「2人で遊んでも、なかなかいいよ」というおススメの言葉は今でも僕の心にずっと引っかかっていて、心の欲しいものリストに「ストーンエイジ」は残留し続けている。

到着したのはサイン会の始まる11時より少し前。10時45分くらいだった。既に店の前には30人以上が並んでいた。僕は思ったよりも常識的な範囲内の混み具合にホッと胸を撫で下ろして、最後尾にならんだ。

Mobious_01


何人かの方は東京のボードゲーム会で見たことのある人だ。今日この日にそうした人たちと一堂に会したことは不思議だが、そもそもクニツィア氏は遠い空の下、全然離れた海外の地に普段はいる。だから、その本人がこの日本にいることの方がずっと珍しい事態なのだが、僕にはその時そのビルの下で、たくさんの人たちと一緒にいることの方が遥かに不思議だった。普段まったく接点を持っていない多くの人が、サインを貰うという極めてどうでもいい目的のために並んでいるのが、無性に楽しかった。

購入するゲームは既に決めていた。「ヘックメック」と「バトルライン」の2つ。正直言えば、「チグリス&ユーフラテス」にサインして欲しかったのだが、わが家では確実にプレイされない。早々に自分の中では却下されていた。

店に通じるエレベーターに乗る直前に、店員の方が下りてきて入場規制が行われた。店の中が混み過ぎたので、5人ずつくらい交代で昇降するようにお願いされる。メビウスゲームズは確かに大きなお店じゃない。でも、そこがいっぱいになっている。どうやらクニツィア氏が非常に丁寧に1つ1つサインをされているとのこと。みんな表情にそれほど出さないが、ニコニコしながら待っていた。

待機列が進み、ようやく店舗に入ると、20人弱程度の人がサインをしてもらうために並んでいる。「クニツィアフェア」と書かれた棚には、クニツィア作品が並んでいる。僕は目的の「バトルライン」がなくて、少し焦ってしまった。しかし在庫は十分に用意されていて、目的の2つの作品を無事購入することができた。

まずはレジを済ませ、サインのための列に並ぶ。お店から鋏を借りて、シュリンクのビニールを取り、どこにサインをしてもらうか考える。クニツィア氏の名前と日付を入れてもらおうと思っていた。"To ○○"みたいなのは要らないと思った。

僕は少し書きにくいと思ったのだが、箱のカバー裏に書いてもらうことにした。本来なら、箱の表面に書いてもらったりする方が、「らしい」のかなと思ったのだけど、サインも箱のデザインもそのままであることが良いのじゃないかと思った。

Knizia_01


クニツィア氏は本当に丁寧にサインをされていた。しかも、サインが終わり立ち去る前には、わざわざ立って一人一人の握手に応じている。最後までそうだったのかどうか分からないが、なんか来日早々に疲れさせてしまっているようで、申し訳ないような気分にもなった。
そんなことを思いながら自分の番が来て、淡々とサインをしていただいた。握手もした。特筆すべきこともなく僕の手番は終わった。

Knizia_02


メビウスママに一言「お疲れ様です」と声をかけられてよかった。その日は本当に大変そうだったから。

別にどうということもない出来事。そんな淡いイベントだったが、僕には新しいゲームを買う興奮がそもそもあり、その気持ちをジンワリと刺激する快感があった。「サイン貰ったよ」とTwitterで呟いた。あー、なるほど、Twitterってこうやって使うのか、と改めて思ったりした。

少し遅れて到着した妻と娘の3人でトーキョードームシティをぶらりしてから、昼食を取った。おなか一杯になって、水道橋から少し長めの散歩を秋葉原までして、電車で帰った。帰りの道中、手に持っている2つのボードゲームの重みが楽しくて仕方がなかった。

静かな興奮が心地いい一日だった。

Sign_01


2013年3月20日 (水)

【ボードゲームレビュー】iPhone版 ケルト ★★☆☆

Keltis_01

評価:★★☆☆[2/4](COMを入れた2~4人プレイでの評価です)

値段:170円(2013年3月17日時点)

プレイ人数:2~4人

プレイ時間:20分ぐらい


iPhoneでやると、妙なわびしさがある。

簡単なゲームの流れ

  • ①手札からカードを1枚出すと、自分のコマを1つ進めることができる。
  • ②出したカードと同じ色の道を進む。色と進む道はそれぞれ5色ある。
  • ③カードには0~10の番号が書かれており、同じ色のカードは昇順か降順のどちらかでしか出すことができない。(2枚目を出した時点で降順か昇順か決定する)
  • ④コマを各色の道の先に進めれば、進めるほど獲得できる点数が増える。
  • ⑤最後に一番得点を稼いだ人が勝利。

Keltis_02


ゲームの総評

ライナー・クニツィアのドイツ年間ゲーム大賞受賞作、ということで本物を買おうかどうか迷った作品。170円で手に入るならと、試しに購入してみた。

確かによくできている。と、まあ、「よくできている」などと巨匠の傑作相手に生意気な意見だが、この言葉特有の引っ掛かり感を利用しないでは、このアプリを語るのは難しい。

電車で暇つぶしするのに、とてもいいゲームだ。なんというか、淡白というか、しかしやっている時は結構一生懸命で楽しいというか、これを機会にやっぱり本物のボードゲームとしてのケルトを買うところまで至らないというか、結局やっぱりよくできているとしか、言い様がないところに落ち着いてしまう。

そう、iPhoneやiPadなどで電源ゲーム化したボードゲームに特有の「ちゃちなものになってしまった」感は否めない。

でも、ゲームを始めるのにとても心理的な壁が低い点は、素晴らしい。「チグリス&ユーフラテス」なんか、結構気力を溜めておかないとスタートできない。それに比べると圧倒的に気軽。先ほど述べたとおり、電車の中の暇つぶしとしては最高だ。

プレイの最初は、抑圧されている感覚がある。我慢できずにカードを出してしまうと、早々に手詰まりしてしまう。もちろん、我慢しすぎてもいけなくて、その辺りのバランスは面白い。しかし、この抑圧感は、実際コンポーネントを触りながらプレイしたら、かなり違ったものになるだろう。iPhone版では、とにかくカードをドローするしかない印象がある。しかし実際にコンポーネントを手で取り、タイルをめくり、願いの石を獲得しながらプレイすれば、この単調なプレイ感は大きく変化するのではないか。

先に進むべきか、堪えるべきか、というジレンマ。そのジレンマを絶妙な魅力としているのは、間違いなくその淡いインタラクションだ。しかしそれが、そのまま薄味に演出されているのは、残念な点だと思う。雰囲気が魅力のゲームをデジタル化するのは、相応の翻案する力、ゲームをデザインする力が必要なのだろう。

ところで、なんかクニツィアのゲームって、「自分のことを理解されてしまっている」感じがして、弄ばれているように思うことがある。クニツィアエンジンみたいなものがあって、人間がゲームを楽しんでしまう構造を、ボードとかコマで実装されているような、そんな感じ。

そんな勝手なイメージのため「クニツィアのゲームは後でやろう(きっと後でやっても面白いだろう)」としてしまっているところがある。今、やっとかないと感が薄いのだよなー。

反面、それは、このケルトもそうだが「クニツィアのゲームは時代を超えていくのだろう」という感覚と言えるのかもしれない。


評価★★☆☆とした理由……できれば、お試しとしてもiPhone版をやらないままに、本物をプレイした方がいいような気がする。本物をやった人だけが、iPhone版をプレイした方がいいような。ちなみに、キャンペーンモードのような一人用モードも入っている。


2013年3月14日 (木)

【ボードゲームレビュー】iPhone版 ボーナンザ ★★☆☆

Bohnanza_01

評価:★★☆☆[2/4](COMを入れた4人プレイでの評価です)

値段:350円(2013年3月14日時点)

プレイ人数:3~4人

プレイ時間:25分ぐらい


プレイヤーをがっちりと受け止めるタフなカードゲーム。

簡単なゲームの流れ

  • ①各プレイヤーは豆の絵が描かれた5枚の手札を持つ。手札から、自分の畑に豆を植える。(1プレイヤーごとに2つの畑を持つ)。
  • ②1つの畑には1種類の豆しか植えることができない。畑に空きがなければ、新しい種類の豆を植える時、既に植えた豆を換金して、畑を空けなければならない。
  • ③豆を植える時に、自分の手札の右端から植えなければならない。手札の順番は入れ替えてはいけない。
  • ④植えるのが終わったら交渉タイム。手番プレイヤーは他のプレイヤーと交渉し、欲しい豆を貰ったり、手札の順番として不要なカードを交換して手離したりする。
  • ⑤山札を3度めくりきったところで、一番お金を稼いだ人が勝利。

Bohnanza_02

↑メイン画面。初手。手番で1枚目の豆を植えるところ。


Bohnanza_03

↑交渉時の画面。敵COMから「ゴガツササゲを2枚やるから、ベニバナインゲン(赤)か大豆(青)をちょうだい!」と言われているところ。


ゲームの総評

交渉メインのカードゲーム。カードゲームらしくない「重み」がある。いや、それを「重み」と表現するのは適切じゃない気もする。どちらかと言うと、「噛み応え」があるという感じ。イラストからは想像ができないほどにタフネスさを持ったゲームだ。

今回プレイして、ボーナンザのルールにほとほと感心してしまった。これは人と遊びたい。iPhoneだけでは満足できない。何より交渉がメインとなる。たとえ負けるとしても、人に負けたいと思ってしまう。

iPhone版ボーナンザの特徴は、その交渉のやり方にある。交渉は2つのフェーズに分離している。「第1.手番プレイヤの提案」と「第2.自プレイヤの提案」というように。

手番プレイヤーがコンピュータ(COM)とした場合を例に説明すると、以下のような流れになる。

交渉の第1フェーズに、手番であるCOMが欲しいカード、渡したいカードの提案を行う。例えば、COMの提案は「大豆を渡して、ソラマメが欲しい」提案だったとしよう。僕はこの提案に対して、僕がCOMに何を渡すかという点だけ変更して返答できる。つまり、第1フェーズでは、「何も渡さないけど、その大豆をください」とか「ソラマメと赤豆を渡すので、大豆をください」などの交渉しかできない。相手が渡そうとするカード(大豆)を変更した交渉はできないのだ。つまり僕が「大豆はいらないので、タダでもいいからソラマメをあげたい」という交渉は、第1フェーズではできない仕組みになっている。

そこで、第2フェーズを活用する。第2フェーズは人間である僕というプレイヤーから提案を行う。そこで、僕はソラマメをただでもいいから(大豆も何もいらないから)もらってほしいという提案を行う。

一方通行の交渉にならないように、こうした手順を踏んでいるのだろうが、いささか冗長な感じがする。iPhone版カタンのように手番プレイヤーからの提案をベースに後は自由に交渉材料のカードを増減させてくれればよかったように思うが、どうなのだろうか。(こうすると何かしら問題が出るのかもしれない。どなたか分かる人がいたら、ぜひ教えてほしい)

そんなわけで、ゲームテンポがあまりよくない。実際のカードを用いたプレイでは、もっとずっとライブ感のある交渉ができるだろうし、何よりテンポがいいのではないかと思う。まあ、なによりも交渉の幅が著しく制限されてしまうので、本来意図された交渉パターン(口約束とか)が網羅できていないことは、元ゲームを知っている人にとって、致命的かもしれない。

しかしだ。こんな交渉がメインのゲームでありながら、iPhoneでコンピュータを相手に遊んでも、こんなにも面白いというのは衝撃だった。本当に素晴らしいゲームだと思う。

デザイナーが同じだという先入観はあるのだろうが、随所にアグリコラとの共通点を感じる。今取るべき手はそれほど多くないのに、その1手が将来的に与える影響がとてつもなく大きく感じる、この緊張感がたまらない。それでいて選択肢や目的が極めてシンプルであるため、方向を見失い、立ちすくむ状態にはならない。散々考えた後、前に進むために必要なのは決断のみ!そんな熱気みたい感覚が自ずと僕をゲームプレイへと駆り立てる。何より、負けてもプレイ自体が楽しいのは、アグリコラを想起させる。

ボーナンザでは、ターンが進むごとに場面がガラッと変わる。将来の予測が立たない。だから、今の現状だけを見て最適解を考える。次に何のカードが出るか分からないがゆえに、現状だけを見ていくしかない。それがむしろ思考の見通しの良さともなっている。

なんとも凄い作品だ。


評価★★☆☆とした理由……作品自体は★3以上としたいのだが、これは人間相手にカードを使ってプレイしてからにしたい。カードゲームという言葉に「軽さ」があるため、そう呼ぶことをいささか躊躇してしまう満足度だ。惚れた。


2013年3月 5日 (火)

【ボードゲームレビュー】ワニに乗る? ★★☆☆

Tierauftier_01


評価:★★☆☆[2/4](3人プレイでの評価です)

プレイ人数:2~4人

プレイ時間:20分ぐらい


バランスゲームの最高峰。と僕は思う。

簡単なゲームの流れ

  • ①一人7個の動物の木製コマを受け取る。
  • ②手番ごとにサイコロをふり、その出目のかず分のコマをワニの上に積んでいく。
  • ③サイコロの出目には、「他の人に自分のコマを乗せてもらう目」や「上に積むことなく机の上に直置きできる目」など、ちょっとラッキーな目もある。
  • ④くずしたら、その崩れたコマを引き取らなければならない。
  • ⑤手持ちのコマを全て無くしたら、勝ち。


ゲームの総評

最高のバランスゲームだ。何より積んでいく様がコミカルで楽しい。色々な形のコマを、中には上下逆さまで積まれていく様子に、思わず顔もほころんでしまう。

同じHABA社の「スティッキー」というゲームと迷ったのだが、こちらを買った。なにより娘がコマを見ながら「ぺんぎんさんだー」とか「おさるさん、のせるー」と、語りながらプレイできたのはとても愛おしい気持にもなった。

「ワニに乗る?」は昨年のクリスマスにサンタクロースが勝手に娘に持ってきたプレゼントである。

娘も最初は気に入ってくれたようで、実際、家族3人のプレイはなかなか盛り上がった。しかし、最近あまりプレイしてくれない。そこでこの前、試しに娘に聞いてみたところ、「もういい、お父さんとお母さんの2人でやって、うん」と言われてしまった。楽しそうにプリキュアの玩具をいじる娘の隣で、妻が気の毒そうに僕を見る顔がひどく胸に刺さった。

妻に「あ、あそんであげようか?」と言われたので、「い、いやいいです……」という夫婦漫才をして以来、あまり目のつかないところに箱は置かれている。

もちろん、この「ワニに乗る?」というゲームを楽しんでいる家族やお子さんも多いと思う。そこで、なぜうちの娘があまりプレイしたがらないのかを勝手に想像してみた。

うちの娘は黙々と何かを作る遊びが結構好きだ。積木も好きだし、お絵かきや折り紙をずっと一人でしている子だ。そんなわけでこの「ワニに乗る?」もなかなか適正度が高いと思っていた。しかし、どちらかというとこのゲーム、積み上げたものを眺めている暇があまりない。自分がせっかく積み上げたものを、他人が崩してしまう可能性がある。一人黙々と作り上げたい嗜好とは、かなり遠かったのかもしれない。

また、子供の興味というのは、結構原始的なものだったりする。子供はおなかいっぱい食べるという内容の絵本が大好きだそうだ。とにかく無意味でも、食べて大きくなる、という描写があると嬉しくなるらしい。

何かを獲得する、増える、大きくなる。こういう志向性を満たすゲームとして、「ワニに乗る?」というゲームはちょっと違った。むしろ崩してしまうストレスの方が記憶に残っているのかもしれない。

なにより終わったときにいっぱいチーズが手に入る「ねことねずみの大レース」の方がウケがいい。ゲームとしての分かりやすさから「ワニに乗る?」を買ったのだが、これはよりゲーム内容を理解したうえで参加してほしい、という僕の思いからだった。しかし、戦略とかそういうことを理解できていない「ねことねずみの大レース」の方が、終わったときの快感度は単純に高かったのかもしれないな、と思った。

いつか娘が大きくなり、僕にも気を使えるような年齢になったら、無理やりゲームに付きあわさせてやろうと思っている。


評価★★☆☆とした理由……いや、マジでいいおもちゃだと思ってます。僕の宝物です。(べ、べつに寂しくなんかないんだからね、勘違いしないでよね!)


※なお、本文と全然関係ない話だが、「誰も触っていないのに崩れてしまった場合」というのが説明書にわざわざ書かれている。「誰も引き取る必要なく、箱にしまってゲームから除外する」というのがルールにおける対処内容なのだが、こういう記述って、なんかいいなあと思う。

2013年3月 2日 (土)

【ボードゲームレビュー】フィルムフィクサー ★★☆☆

Filmfixer_01

評価:★★☆☆[2/4](4人プレイでの評価です)

プレイ人数:3~4人

プレイ時間:35分ぐらい


気になってしょうがないゲーム。

簡単なゲームの流れ

  • ①手番が回ってくると、手番プレイヤー以外の人が賭けを行う。 
  • ②賭けの流れはこうだ。場には映画ジャンル、俳優、映画会社のカードが何枚か置いてあり、手番プレイヤーが使うカードを予想する。そして、自らのお金カードを予想した内容に対して賭ける。
  • ③手番プレイヤーはその予想を踏まえ、場にあるカードを使って映画製作する。一方手番以外のプレイヤーは予想が当たれば、勝利点かお金をもらえる。
  • ④山札からエンドカードが出たら終了。
  • ⑤最後に最も勝利点が高い人が勝ち。

Filmfixer_02



ゲームの総評

このカードゲーム、面白いような気がする。1回しかやれなかったから、自信を持って言えないけれど、面白いような気がする。

「勝利点を稼ぐための行為」を全てなげうって、全部をおじゃんにする獰猛さ。この「おじゃん」が何度かやってくるゲーム展開が面白い。

ルール説明を受けた時「手本引きか?」と最初に思ったが、親が先に選択するのではなく、子だけが張りを行う。ちょうど手本引きの親子が逆転したような賭け方をするのが面白い。

いろいろな種類のカードが一挙に与えられたり、カードの扱いに細かなルールがあったり、特殊効果満載だったりと、ぐちゃぐちゃしている印象は否めない。きれいにまとまっているゲームではないし、テーマが「映画製作」ではないところも、伝わりにくいかもしれない。

どちらかというと「製作プロデューサー」をテーマにしている。

唐突だが、米アカデミー賞で、作品賞のオスカー像を受け取るのは誰かご存知だろうか。監督でも主演俳優でもない。その作品の製作プロデューサーだ。中学生のころ、僕はそれを知って、とても汚い大人の世界を見るような思いになった。儲けるのも、栄誉を手にするのも、金を持っている奴、金を使って賭けごとしている奴なんだなあと。とても子供っぽい感想だが、このゲームのタイトルにあるフィルムフィクサーという言葉を聞いて、久しぶりにその頃の面映ゆい感情を思い出した。

普通、ゲームをしていると、いろいろと選択肢を考える。"A"と"B"と"C"の3つの手を思いつく。で、どの手が一番いいか考え、1つの手に決める。通常のゲームならそうやって進む。しかし、フィルムフィクサーでは、そうした選択肢の中に常に"Z"という「全ておじゃんにする(=映画作るのやーめた)」という手が入り込んでいる。で、これがかなり勝負においてカギになる。相手の賭け金を全部消滅させる"Z"という手は、自らも得点を得られないデメリットはあるが、相手を大きく失点させる手でもある。そこを心理戦という形でゲームにしてあるのだ。強欲なプロデューサーたちへのゲームならではの反逆でもある。

初めてやった時、ある人が大量得点して勝利した。これも良かった。うわー、そこを抑えるべきなのか、と分かった気がして楽しい。

また、特殊カード満載のカードゲームだが、その効果をあらかじめ知っておかないとプレイできない、ということがあまりない。そのため、特殊効果を覚えるための「学習時間」をインスト時にそれほど割かなくてもいいというのも素晴らしい。そして、一回やるとほぼ全てのカードが登場するため、カードの特殊効果なんかは自然と理解できる。プレイ時間が短いのも、その点いい効果を生んでいる。

強烈にオススメされたという事情ももちろんあるのだけれど、これ、なんか凄くいいゲームのような気がするんだよなあ。物凄い可能性を秘めているような……。

あー、やりたい。もう一回やりたい。


評価★★☆☆とした理由……。とても仕組みが面白いゲームだと思った。でも、ゲームプレイ自体ぼんやりした印象でもある。再プレイして考えたい。

« 2013年2月 | トップページ | 2013年4月 »