【ボードゲームレビュー】P.I. ★★★☆
評価:★★★☆[3/4](5人プレイでの評価です)
プレイ人数:2~5人
プレイ時間:60分ぐらい
推理ゲームの美しいかたち。
簡単なゲームの流れ
- ①ボード上に14のロケーションがあり、各所に"容疑者"と"犯罪"がランダムに配置される。
- ②プレイヤーは自分の右隣の人が持っている容疑者、ロケーション、犯罪カードが何かを推理するのが目的。
- ③各プレイヤーは自分の手番で捜査対象を選び捜査を行う。
- ④右隣の人は選ばれた捜査対象について、自分の持つカードと適合しているか、ロケーションが近いか、という点について情報提供する。
- ⑤容疑者、犯罪、ロケーションの3つ全てが分かったら告発する。告発する速さによって勝利点が異なる。3つの事件が終わった後、最も点数の高い人が勝ち。
ゲームの総評
推理物ゲームというのが元々僕は大好きだ。昔、ミステリーが大好きだったこともあり、下手なくせに推理モノというだけで、そのゲームの評価が甘めになってしまう。
だから、後々考えるとこのゲームについても、それほどじゃあないんじゃないか、という思いもよぎるのだが……。う~ん、でもやっぱりこのゲーム、好きだ。
このゲームは、全員が同じ事件について捜査するわけではない。自分の右隣の人が握っている事件(犯人や犯罪)をひたすら追い求める。だから、早く真相に近付くことは重要だが、どれだけ真相を掴むのが遅くなってもゲームは終わらない。全員が自分の事件を解決するまでゲームは続く。その事件を解決するのは自分だけだからだ。
みんなが1つの事件を追うという推理ゲームの前提。この前提を僕はとても当たり前のことと思っていた。
最初にこのゲームのシステムを聞いて、事件の持つ重みが小さくなってしまうのではないかと危惧した。そして、どのようなインタラクションが生まれるのかイメージできず、非常にソロプレイ感が強くなるのではないかと思った。
しかし、各々の私立探偵の捜査が、1つの街の中で絶妙なインタラクションを生み出す。ゲームを進めるごとに、自分にとっての手がかりが他プレイヤーの様々な行動の中に散らばっていることに気付く。ゲームプレイにおける話だけではない。このシステムにより、けちな私立探偵たちが、各々の小さな事件を追っているという、とてもベタでハードボイルドな世界を作り出す。そこは、シルエットの濃い、湯気の立ち上るような暗い街を想起させ、システムやアートワークがテーマを綺麗に裏打ちする。当初思っていた以上に、システムとテーマがカッコよく融合していて、ハードボイルドの世界を匂い立つ程に感じさせてくれる。凄い。
それにしても、推理ゲームでいつも思い知らされるのは、名探偵のような劇的な推理は必要ないという事実だ。そうした論理を華麗に跳躍するようなひらめきよりも、推理ゲームでは、1つ1つ足場を固めていくような堅実さが重要になる。だから推理ゲームをする自分は、「名探偵ではないよなー」と、いつも思っていた。
しかし、こうした推理ゲームで必要な堅実な捜査が、このゲームのテーマにはとてもマッチしている。足で事件を解決する地味な私立探偵。それは超人的な知性を持つ名探偵ではなく、あくまで私立探偵(Private Investigators)でしかない。ハードボイルドの世界よろしく、きっと探偵としての物語は、その犯人を見つけ出した後に生まれるのだろう。そうした世界観へ気持ちよく想像を広げさせてくれる本作は、やっぱり名作だと思う。
評価★★★☆とした理由……推理系のゲームは色々あるのだろうけれど、アートワークとシステムに強く惹かれてしまった。マーチン・ワレスって凄い人なんだな、という印象も強く残った。
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