【コラム】なぜボードゲーム初心者は憧れの重量級ゲームを買うべきか?
ボードゲームを買うようになってから、もう半年以上が経った。まだ初めてボードゲームを触った頃の気持ちが残っているうちに、書き残しておこうと思っていることが1つあるので、そのことを書く。
ボードゲームの話では全然ないのだが、昔ネットだかテレビだかで、ショパンの「幻想即興曲」を独学で学んだというおじさんが出ていた。曖昧な記憶だが、そのおじさんはこれまでほとんどピアノを正式に学んだことはない。しかし、ショパンの「幻想即興曲」に憧れて、ピアノを独学で学び、その曲を弾きこなすまでになった。
僕はそのおじさんを見て、強い共感を覚えた。その演奏は決して上手いものではない。とても素人くさい。でもそのおじさんの成したことは、ピアノなど全く素人の僕にも強烈な印象を与えた。
はっきり言って彼は無謀だと思う。きっと「よく分かっている人たち」は、そんな無謀な彼を目の前にしたら、とても正しいアドバイスをするだろう。基礎を教えてくれる音楽教室に通うべきだとか、もっと簡単な曲からマスターするべきだとか。その方がずっと近道なんだと。
そういうアドバイスはきっと正しい。しかしだ、おそらくそのおじさんを突き動かしていたのは、「幻想即興曲」に対する圧倒的なロマンだったろう。ショパンの「幻想即興曲」には、きっと効率とかいう真っ当な価値観を忘れさせる何かがあった。「エリーゼのために」にはない圧倒的な魅力があったはずなのだ。
ボードゲームを好きになって、ネットでいろんな情報を集めるようになり、そこで「初心者に難しいゲーム」という言葉を見つけると、いつもそのおじさんのことを思い出す。
「初心者に難しいゲーム」という言葉。これ、多分、正しい。初心者には厳しいというのは、きっとその通りなのだろう。
でも、僕と同じように、初心者の中には、きっと憧れの重量級ゲーム、重ゲーを心に抱いている人が少なからずいるのではないかと思うのだ。「1ゲーム3時間かかります!」とかにロマンを感じちゃったりしている初心者がきっといっぱいいると思う。
で、最近よく思うのは、他人の言葉なんか気にせず、買っちゃえよってことだ。「上級者向け」?気にするな。難しくてよく分からなかった?けっこうけっこう。きっと、その行為は、次に繋がる「かけがいのない経験」になる。
ベテランの人たちだって、何も意地悪をして「初心者に向かない」なんて言っているわけではない。ある程度の手順を踏んで、100%の状態でその名作を楽しんでほしいからこそ、そう語るのだ。
しかしだ。大切なのは、そうしたロマンを持ち続けることだ。そういう訳の分からない思いに突き動かされてこそ、自分にとっての「特別なボードゲーム」は手に入るのではないか。そして、その期待と失望と歓喜のサイクルは、どれだけベテランになっても、もしかして、変わらないんじゃないか。
だから、色んなレビューサイトを見て不安になるよりも、一発どかーんと買っちまえばいいと思う。そのゲームに憧れてしまうくらいなんだから。
少なくとも半年間いろいろなボードゲームサイトを見たり、ボードゲームを買ったりして分かった。どうやら、ボードゲームに憧れやロマンを抱いてしまうしょうもない人間は、「初心者」という言葉の中に含まれていないようなのだ。
だから「まだボードゲームに慣れてないからな」なんて言って、重ゲーを買うのにためらう必要は全くない。
これは想像だが、どんなベテランプレイヤーも、そうした「思い切った跳躍」をかつて1度、経験したことがあるのではないだろうか。「難しいかな、どうなんだろうな」と迷うところをジャンプした先に広がる世界が、きっとあると思う。
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