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2013年7月18日 (木)

【ボードゲームレビュー】小早川 ★★☆☆

Kobayakawa_01

評価:★★☆☆[2/4](5人プレイの評価です)

プレイ人数:3~6人

プレイ時間:15分


シンプルにして……

簡単なゲームの流れ

  • ①カードは全部で15枚。1~15の数字が1つずつ書かれている。全員に1枚のカードを配る。残りを山札にしてそこから1枚めくり、そのカードを「小早川」とする。
  • ②手番は2巡する。1巡目。自分のカードと新たに山札から1枚めくったカードと、どちらを自分のカードとするか選択する。
  • ③2巡目。自分の手札で勝負するか選択する。勝負する場合はコインを1枚賭ける。
  • ④勝負する人だけカードを公開。ただし最も小さい数字の人は小早川カードを足すことができる。最も数字の高い人が勝ち。賭けられたコインを総取りする。
  • ⑤最後の勝負はコイン2枚賭け。最後に最もコインを持っている人が勝ち。

Kobayakawa_02



ゲームの総評


10年前だったろうか。初めてiPodを買って、箱から取り出した時の感動は今も忘れられない。「なんか箱もかっこいいー」とキャッキャしながら妻と(その時はまだ彼女だったけど)、箱を開けた時のことを今も覚えている。

オインクゲームズさんはきっと箱を開けるところから、そしてその箱をしまって部屋の棚に置いておくところまで、その商品がカバーすべき体験だと捉えて作品を作っていると思う。僕はアップル大好きのアホなので"iPodほど"とまでは言わないが、そういう周辺体験を大事にして、単に大事にするだけでなく、このレベルのクオリティにまで商品を持っていける実力というのは本当に凄いと思う。このクオリティがあるからこそ、きっと多くのファンが静かに、そして着実に支持を続けているのだろう。

僕はオインクゲームズさんのゲームをそれほど買っていないので、いいファンではない。そのくせエラそうな事を書いてしまうが、オインクゲームズさんはとてもボードゲーム業界において大切な存在だと思っている。その大事さを、僕は「多様性のある普及」というキーワードで捉えている。これは「藪の中」を買った時から、ずっと思っていることなので、「小早川」をプレイしたこの機に書いてしまおう。



「ボードゲームがもっと普及したらいいな」という思いは多くのボドゲファンが抱いている素朴な願いだ。しかしその「普及」とは一体どういう状態なんだろうか。

僕は「普及」することが単純にファンの数や市場規模がでかくなることだけでは、いつも少し寂しいと思ってしまう。もちろんファンが増えて業界の市場規模が拡大することは望ましいことだ。だけど、「多様性」という観点からも「普及」が評価されていいのではないか、とも思うのだ。これは贅沢な願いかもしれないが、「多様な価値観が存在する普及」を望んでしまう。

だから、僕はいわゆる「普通のボードゲーム」をみんなが愛する必要はないと思っている。極端なパターンとして、オインクゲームズのファンがその他の普通のアナログゲームやボードゲームに魅力を感じ「ない」のだとしたら、それを僕は「全然アリ」だと思う。いわずもがなだけど、逆もまた真(全然アリ)だ。

多様な趣味趣向が集まっていられること。嗜好の似た人たちが集まる居心地のいい沼よりも、たとえ細くとも常に新しい水が注ぎ込む小川を僕は好む。だから「現時点でゲームを別に愛していない人」がいてもいい。それでも、そういう人が思わずボードゲームを楽しんでしまったりしたら、まさしく「してやったり」なんじゃないか。

だから、なんと言うんだろう。究極的には「分かり合えなくてもいい」と思っている。そういうお互いに認め合うことができない価値感が、そのまま「一緒にいる」ことに意味がある。「普通のボードゲームをみんなが愛する必要はない」というのは、そういうことでもある。もちろん異なる価値観を持つ人同士を一緒にしない方がいい場面というのもあるだろう。以前、話題になったモノポリー大会の例もあるように、競技や試合などという「真剣の場」などは典型的な例だ。意識の違いが悲劇を生む。だから住み分けた方が快適であることは十分に理解しつつも、しかしそれでも単に住み分けてしまうことに割り切れないモヤモヤした感情を抱く。

個人的には僕にも色々趣味趣向はあって、「ドミニオンとか別ジャンルの遊びじゃね?」とか「ウォーシミュレーションは全く興味持てないわ―」とか思う。そう思うんだけど、例えばゲームマーケットでああいう違うモノが混然一体となって場を共有していること自体は凄く嬉しい感じがする。将来的にゲームマーケットの規模が大きくなって、もしかしたらジャンルごとに会場が別れてしまうかもしれない。たとえそうなったとしても、それが悪いことだとは思わない。けれど、今もっている「豊かさ」みたいなものはきっと減ってしまうだろう。これは、僕自身が、業田良家の漫画にあった「カオスであるってことは、豊穣でもある」ということを信じているからだ。今のカオスな状況が持つ魅力と豊かさに僕が惹かれているからだ。

健全な業界であれ、とは思わない。しかし逞しい業界であってほしいと願う。逞しい業界とは、多様な人を受け入れる業界なのではないか。子供、女性、高齢の方、ライトユーザ、ヘビーユーザ、色々なタイプの人間が溢れている方がいい。オインクゲームズさんはその意味において、この業界における重要な橋頭堡だと僕は思う。そして「小早川」はその戦線で戦っていけるゲームの1つであり、「オサレなゲームww」などと鼻で笑う人のルサンチマン的嫉妬など、物ともしない強さを持っているゲームだと思っている。


評価★★☆☆とした理由……面白い。ほとんど説明をされなくてもいきなりジレンマにぶち当たる感じ。どこまで考えても、合わせ鏡のように裏に裏に思考が連鎖していく。ただ、なんとなくだが、「藪の中」より色々感想や悩みを語りあうのが難しい気がする。

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