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2013年7月 3日 (水)

【ボードゲームレビュー】惨劇RoopeR ★★☆☆

Sangekirooper_01

評価:★★☆☆[2/4](4人プレイの評価です)

プレイ人数:4人

プレイ時間:180分以上


なぞる楽しさ。

簡単なゲームの流れ

  • ①1人の脚本家と3人の主人公にプレイヤーは分かれる。
  • ②ゲーム開始前に脚本家は、シナリオと登場人物に割り振る役職や犯人役を決定する。
  • ③主人公らは自分の手元のアクションカードを使って、その役職や犯人を捜す。
  • ④脚本家は、主人公プレイヤーたちの行動を先読みして、なんとか彼らが敗北する条件を満たすようにアクションする。
  • ⑤一方、主人公たちはバッドエンドに到達してしまった場合は初日に戻ってループする。規定ループ分、敗北条件を回避するか、全ての役職を明らかにできたら、主人公たちの勝ち。

Sangekirooper_02



ゲームの総評


個人的に印象に残ったのは、キャラクターの描かれているカードがリバーシブルになっているところだ。いわゆるアニメ調のキャラクターと「かまいたちの夜」に出てくるようなシルエット調のキャラクターと、裏表にそれぞれ描かれている。アニメ調がいやな人は、シルエット調の絵柄でプレイすることもできる。この自省的な感じが、一般的な商品ではなく、いかにも同人ゲームぽいなと感じた。

こだわるポイントが僕たちの経験値の方に随分と偏っている。これこそが惨劇RoopeRの魅力なのだろう。リバーシブルなキャラクターカードはその象徴のように思えた。

実際にプレイしてみると「アナログゲームでありながら、ノベルゲーっぽいフラグ立てやループをよくここまで再現したなあ」と感嘆してしまう。様々な意匠や工夫が至る所に配置されていて、中でもバッドエンドを収集することで、ベストエンドに向かうという流れがちゃんと実現できる点は白眉とも言える特徴だ。

デジタルなノベルゲームであれば同じような遊びをずっと快適にプレイできるのに、アナログな形式でわざわざプレイする。しかし、その「わざわざプレイする」ことに意味がある。個人的に、推理系ボードゲームとしてはP.I.の方が凄いと思うのだけど、惨劇RoopeRでしか味わえない楽しさ・魅力というのは確かにある。心のどこかでずっと前から待っていた欲望を満たしてくれたような喜びがある。


惨劇RoopeRは、プレイヤーに教養(ノベルゲームに対する教養)を要求する。こうした世界観を前提知識として持っていない人は、おそらくこのゲームの様々な「意味」が分からないだろうと思う。例えば、惨劇RoopeRには、巫女や入院患者という唐突なキャラクター設定が、何の説明もなくいきなり最初から出てくる。こうした設定自体に「特に意味はない」んだと理解することは実は中々難しい。ファンタジーの世界に、ホビットやドワーフがいきなり出てくることに「特に意味がない」ことと同じだ。そういう所で「突っかからない」ための教養が必要になる。そもそも「なぜループするのか」という肝心な部分を一切端折っていることは、このゲームが「ループする世界」を体験させたいのではなく、「ループ物というジャンル」を体験させようとしていることを直截に示している。

カードに描かれるキャラクターがボード上で繰り広げるドラマは、ノベルゲームの即興的な二次創作のようだ。「ひぐらしのなく頃に」がセルフ二次創作ゲームだったように、惨劇RoopeRも、発想の出発点から同人的な二次創作が強く意識されている。だから、自らの教養を踏まえて遊ぶにはとても適切で贅沢な道具立てがされていて、かなり満腹度の高いゲームだと思う。

こういう間口の狭いゲームは、玄関をヨイショっと腰をかがめて入るような楽しさがある。少しヨイショっと言って入る時のワクワク感というか。そういう手間のかかり方こそ愛おしい感じがするのかもしれない。

一方で、「このゲームは遠慮しとこうかな」と直感的に感じる人は避けておいた方がいいだろう。その直観はまず間違いなく当たっているだろうから。


評価★★☆☆とした理由……発見が多くて楽しい。プレイ時間が長くて、細かなルールが意外にある。強く趣味的であり、ある意味、プレイしたいメンバーが限定されるパーティゲームなんだと思う。

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