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2013年10月

2013年10月26日 (土)

【ボードゲームレビュー】シティビルダー ★★☆☆

Suburbia_01

評価:★★☆☆[2/4](4人プレイの評価です)

プレイ人数:1~4人

プレイ時間:90分


堂々たる都市建設ゲーム。

簡単なゲームの流れ

  • ①毎ターン、資金を元に、自分の街に1枚の施設タイルを購入して配置する。
  • ②施設を建てると、その施設の効果によりお金か評判を獲得できる。
  • ③評判をあげると、街の人口が増える。
  • ④お金が増えれば、その資金で新しい施設を建てられる。
  • ⑤最後のターンで最も人口が多い人が勝ち。

Suburbia_02


ゲームの総評


シムシティだ。このゲームを遊ぶとそう呟かずにはいられない。もちろん、似たようなボードゲームは他にもあるのかもしれない。僕の浅いゲーム経験の中で似たようなゲームと言えば街コロがあるが、シティビルダーでは街の施設一つ一つがカードではなく6角形の厚めのタイルになっているのがいい。各施設に建物としての重みがある。

工場の近くに住宅地を立てたりするとデメリットがある。だから街並みは「西側が工場地帯で、東側に住宅街。そしてその間に湖畔がある」というように自然と色分けがされる。これが面白い。街がただカオスに大きくなっていくのではなくて、一定の秩序を持って拡大していく。まさしく箱庭を作り上げていく感じがある。そして、美しい街を作りたくなる。それがゲームとしても勝利点(人口)が稼ぎやすい街になる。この美とゲームを両立しようとしているところが素晴らしい。もちろん、完全に両立できているわけではないのだが、その方向性は凄く感じられる。

一方で、手順は少し面倒だ。各施設は隣り合うことで様々な効果を発揮する。だから、Aの施設を街の中に配置するときに、Aの効果を考えることは比較的たやすい。しかし、Aを配置するときに、そのAに隣接するB、C、D……という既存の施設の効果を「再度」考え直さなければいけない。隣接するタイルが増えると特殊効果の乱反射が起きる。この処理がなかなかに手間だ。中には隣接しなくても効果が発揮したり、他プレイヤーの街の施設が影響する効果もある。この辺りの複雑さに直面すると「あー、コンピュータゲームとしてやりたいかも」と思わなくはない。(ルールを誤って僕が理解している部分もあると思う)

しかし、こうした輻輳した関連性をちゃんと吟味しながら遊ぶと実に面白い。慣れが必要というところはあるが、よくできているというのは間違いない。量は多いが、意外にコンポーネントの種類もシンプルだし、さすが2012年の話題作ではあるなと感じる。


評価★★☆☆とした理由……面白いが、初回の面倒さはいかんともしがたいと思う。あまり評価しないという人が出るのもしょうがないだろう。しかし、街建設ゲームとして満たしてほしい欲望を高いレベルで満たしてくれるのも確かだ。

2013年10月23日 (水)

【ボードゲームレビュー】ムガル ★★☆☆

Mogul_01

評価:★★☆☆[2/4](4人プレイの評価です)

プレイ人数:3~6人

プレイ時間:45分


ミニ株式。

簡単なゲームの流れ

  • ①一人一枚の株券を持ちスタート。持っている株券はすべて公開。
  • ②山札から1枚株券カードをめくり、全員が持っているコインでそのカードを競る。
  • ③落札した人はそのカードを取得するか、そのカードに指定された種類の株券の売却権を得る。
  • ④プレイヤー全員で持っている数が多い株券ほど高く売却できる。
  • ⑤山札から暗黒の木曜日カードがめくられたら終了。最も獲得ポイントの多い人が勝ち。

Mogul_02


ゲームの総評


これは面白い。すごくシンプルなのに、いわゆる株っぽい世界がちゃんと表現されている。みんなが多く集める株券ほど高く売れる。そして、みんなが売れば売るほど、その株券の価値は下がっていく。「売り抜ける」という言葉がちゃんとゲームで実現されていて、売り時を見誤ると大損してしまう。こうして口にするのは簡単だが、それが見事に形になっているのは凄い。何よりちゃんと面白いのが素晴らしい。

ただ、面白いは面白いのだが、すごく理性的でないとダメなゲームでもある。というのも、競りで使うコインの価値が勝利点の5分の1の価値しか持たない。なんとなくコインという形のある物を触っていると、本能的にはそれを集めたくなってしまう。しかし、当然ながら、ちゃんと株券を売って勝利点(ポイント)を稼がないとゲームには勝てない。ちなみに勝利点はボードの周囲に描かれた得点トラックにコマを置いて示す、あのよくあるタイプの奴だ。

色々なところで言及されているとおり、ムガルはゲシェンクに少し似ている。しかし、この勝利点とコインに対する感覚がゲシェンクとはかなり違う。ゲシェンクにはジャラジャラとコインを集める快感があった。で、ゲシェンクでも実際はカードによる減点が大きいとどれだけコインを持っていても勝てないのだけど、もはやそういうことはどうでもいい程、コインを得る快感を野放しにしているところがあった。

一方で、ムガルの場合、コインというコンポーネントが魅力的なのに、それに囚われすぎてはいけない。コインの快感におぼれることを許さない厳格さがムガルにはある。で、この厳格さはゲームとしてはとても正しいし、まさにこうでなくてはいけなかったのだろうと思う。

でもね、なぜかコインを見ると、弱い自分はついつい集めたくなってしまう。


評価★★☆☆とした理由……二回目をぜひやりたくなるゲームだ。ただ、とても渋いゲームなので、若干批評的な味わい方が求められるかな、という気もした。

2013年10月 7日 (月)

【ボードゲームレビュー】テラミスティカ ★★★☆

Terra_mystica_01

評価:★★★☆[3/4](5人プレイの評価です)

プレイ人数:2~5人

プレイ時間:150分


ツンデラミスティカ。

簡単なゲームの流れ

  • ①プレイヤーはそれぞれファンタジー世界に出てくるような14の種族(魔女、巨人、マーメイドなど)の中から1つを選択する。
  • ②自分の手番でアクションを1つ実行する。領土を開拓するとか、魔力を使うとか、建物を発展させるとか、特定の宗教に司祭を派遣するとか。
  • ③何回か手番を回し、これ以上何もすることがなくなったら、パスを宣言する。全プレイヤーがパスを宣言したら、1ラウンド終了。全6ラウンド繰り返す。
  • ④ラウンドの開始には、自分の領土などに応じて資源やお金などの収入を得る。
  • ⑤6ラウンド終了して、得点計算の結果、最も勝利点が多い人が勝ち。

Terra_mystica_02


Terra_mystica_03


ゲームの総評


初心者多めの5人プレイ。インスト含めて4時間。長すぎる。今回、トイレ休憩とらなかったけど、凄まじく長い時間をぶっ続けで集中して過ごした。疲れた。

ルールはこれでもかと詰め込んである。複雑だ。どこからどこまでが1アクションなのか、最初は少し戸惑ったりする。やれることはいっぱいあるように見えても、ラウンド開始当初はリソースも限られている。だから「とりあえず、これやるか」みたいにアクションを意外に簡単に決められる。導入部、開拓をサクサク進めていく展開になんだかワクワクする。

……などと、ちょっと褒めたみたいな書き方を思わずしてしまうと、少し「くそっ!」と思う。というのも、テラミスティカを体験する前は、こんな「残念な」ゲームは、悪口言いまくってやりたいと思っていたからだ。バカにして、コケにしてやりたいと。淫靡な眼差しで、テーマからシステムから、あらゆる要素で僕を誘惑するテラミスティカに、言いようのないムカつきを感じていた。

「何が種族だよ。何が宗教だよ。どうせ色んな要素を詰め込みまくって、それぞれのアクションにメリット・デメリットがあって、きっと、悩むようにウマいことできてるんでしょ。わかってんだから。もう!」と、ずっと乙女のようにアンビヴァレントな気持ちを抱いてきた。プレイするまでに随分と間が空いてしまい、どうやら何かをこじらせてしまったようで、簡単に褒めてたまるか、という気持ちになっていた。

で、実際やってみたら4時間である。ほらみろ、馬鹿じゃないか。とんでもないゲームだ。インストする人の気持ちにもなれ。だいたいこんな長いインスト、好きな奴しか付き合ってくれないじゃないか。陣取り?交易所を立てる?隣接するメリットがよく分からんぞ?お、隣接していると資源もらえるの?

お金が足りない、労働力も足りない。パワーってなんだ。それは少ない方がいいの?へぇー、廃棄した方が効率よく循環させられる?あら、なんかドミニオンみたい。なるほど、そういうやり方もあるのか。

え、すごいじゃん、この種族の能力。まじでタダで陣地増やしていいの?うほー、開拓していくの楽しいな。なるほどねー。こうやって自分の領土を繋げて増やしていくのか。

お、こんなに領土広がったよ。街?領土が広がると発展して街になるの?すごい!勝利点とか色々手に入る。ひー、そうか、宗教の力、重要じゃん。今頃こっちのボード見る余裕ができてきたよ。

…………。
…………。
…………。
…………。

なぜかこのゲーム、言葉を紡ぐのもじれったく、そして無性に楽しい。政治的に正しくない言い方をすれば「男はみんなこれ好きだろうな」って感じだ。ワクワクが止まらない。『主に泣いてます。』という漫画の名ゼリフ「男はみんな隙があれば(映画の)ダークナイトのことを話してやろうと思ってるんだ」を思い出した。

そう、男はみんな隙があればテラミスティカのことを話してやろうとウズウズしているのだ。まぁ要はバカだってことだ。

プレイする前は「こういうややこしいゲームはもういいよ」という気持ちもあった。けれど、テラミスティカが楽しいのは事実なのだから困る。どのくらい困るかというと、複雑でヘビーな他の重量級ゲームを「まあ、このゲームも重ゲーだけど、テラミスティカよりは軽いかな。あー、テラミスティカやれないなら、これでもいいから何かガッツリやりたいわ」とテラミスティカのおかげで取り出して始めたくなるくらいだ。重ゲーに対するロマンというか楽しかった記憶が不死鳥の如く蘇生して、そういう世界に改めて浸りたくなる。

もちろん、そうした興奮を脇に置いて、冷静に考えれば「このゲームは一緒にやる人を選ぶよな」とか「周囲と隔絶して、こういうゲームばっかりに夢中になるのもどうなのかな?」と思わなくはない。しかしだ。テラミスティカがいい大人の男を妙な興奮に陥れる力を持っていることは確かだ。ゲームが終わった後、しばらくテラミスティカのことばかり考えていたくなる。

テラミスティカは、プレイしないで批判するべきだったとつくづく反省した。ミイラ取りがミイラになる。罪つくりなゲームとはこういうゲームを言うのだろう。


評価★★★☆とした理由……複雑だけど面白い。いいじゃないかそれで。

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