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2014年5月

2014年5月25日 (日)

【ボードゲームレビュー】ホームステッダーズ ★★☆☆

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評価:★★☆☆[2/4](4人プレイの評価です)

プレイ人数:2~4人

プレイ時間:90分


競りと拡大再生産の素直なカップリング。


簡単なゲームの流れ

  • ①ラウンドの最初は、全員で施設購入のための権利を競りあう。
  • ②獲得した権利ごとに建てられる施設の種類が異なる。
  • ③建設した施設によって、資源、特殊な効果、勝利点を得られる。
  • ④数回のラウンド繰り返すと時代が進み、建てられる施設が変わる。
  • ⑤全10ラウンドで、最後に最も勝利点を獲得した人が勝利。

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ゲームの総評

建設、拡大再生産、競り、鉄道。男の子が好きそうな要素が満載。コンポーネントを見ているだけでワクワクするゲームだ。昔、トム・クルーズとニコール・キッドマンが出演した「遥かなる大地へ」という映画があった。あまり面白かったという印象はないのだが、映画の中に自分の土地を探すために大草原を駆ける、ランドラッシュのシーンがある(ランドラッシュ - Wikipedia)。みんなで集まって「いっせーのーせ」でオクラホマの大地に一斉に飛び出すレース。西部開拓時代の後、フロンティアが消滅したアメリカで、自分の土地を自分たちで決めるために、大草原を駆け、自分で杭を打ち、早い者勝ちで「ここが俺の土地だ!」と叫ぶ。なんともアメリカンな殖民政策。そのあまりに豪快で奔放なやり方に衝撃を受けた。


なぜそんな話をするかというと、一見地味で物静かな装いのこのゲームは、そうした野卑な時代のテーマに結構ちゃんと合致しているように思えたからだ。例えば、競りというのはレースゲームみたいなところがある。競りは早いもの勝ちだ。アクセル全開で、高値を付ければ、より望んだモノを手に入れることができる。しかし、ランドラッシュのように、凄まじいスピードで先を争えば争うほどに、ひとたび躓いたときに手痛いしっぺ返しをくらう。そして、競りというレースに勝ったからと言って、それがすぐさまバラ色の未来になるわけではない。このホームステッダーズにおいて競るのは具体的な物資や施設ではなく、その施設を建設するための権利だ。権利がすぐさま資源や資金を算出するわけではない。競りの後に実際に建設する施設こそが具体的な富を産む。過酷なレースに勝ったとしても、その後、どのような町を建設するかという冷静で計画的な戦略が必要になる。それはランドラッシュという激しいレースの後、そこで手に入れたものが土地でしかなく、その上にどのような生活を築いていくかは、また別の話であるという事態にも似ている気がした。


どこで息継ぎをするのか、どこで全力を出すのか。釣り上がっていく値段を見ていると、ランナーズハイに近い興奮を覚える。そういう競りの後、どんな施設を建てるかに頭をひねり、建設した施設から収入を得て、次の競りや建設に望む。このサイクルがとにかく気持ちよく、わかりやすい。ホットとクールのバランスがとても良いゲームだと感じた。


しかもこうした繰り返しだけで、このゲームは終わらない。なんとラウンドごとに時代の概念があって、時代が進むごとに建設できる施設がより強力になっていく。分かりやすい仕組みだが、この時代が区切られていることで、思考をリセットしたり、整理しなおしたりができる。初プレイの人間にとっても、それは戦略を切り替えるキッカケになり、ゲームを続けていく上で、いいモチベーションにもなる。


ホームステッダーズは、シンプルながらテーマの魅力を受け止めるだけの力強さを持った懐の深いゲームだ。最初はシステムが色々と組み合わさった無骨なゲームにも見えるが、プレイしてみると、とても見通しがいい素直な気持ちよさがある作品だ。



評価★★☆☆とした理由……コンポーネントは色々とあるが、実は物凄くシンプルなゲーム。どんどん生産能力が拡大していくところは素直に楽しい。ただ資源の種類が多く、収支を細々と出し入れする作業は結構煩雑。そういう作業は、各自が黙々とやることになりがちだ。どうでもいい話だが、資源を細かく出し入れしていると、不正をするつもりは全くなくても、自分がなにかミスをしているのでは?とちょっと不安になったりした。

2014年5月17日 (土)

【ボードゲームレビュー】ジュリエットと怪物 ★★☆☆

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評価:★★☆☆[2/4](5人プレイの評価です)

プレイ人数:2~5人

プレイ時間:20分


ばば抜きと推理とブラフ。


簡単なゲームの流れ

  • ①手札は、必ず数字が昇順か降順になるように並べなければならない。
  • ②手番では山札か他プレイヤーからカードを一枚取る。
  • ③手札に怪物のカードの同じ数字のペアがある場合は、そのペアを捨てて、他プレイヤーへの挑戦ができる。
  • ④挑戦で、他プレイヤーの手札からジュリエットのカードを引けたら、勝利。
  • ⑤ジュリエットのカードを持っているプレイヤーは、手札を基準以下の枚数に減らすことで勝利。

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ゲームの総評


ルールを聞いて「なるほどなー」と思うとともに、「これ大丈夫かな?」と感じた。なんというか、色々な要素がつぎはぎで作られているようなキワモノ感。ゲームとして成立するために様々な意匠を合体して作り上げられた、まさにこのゲーム自体がフランケンシュタインやキメラのような怪物に思える。


例えば、手札の並びを変えてはいけないというルールがある。そして、自分の手札を並べるときに必ず「昇順か降順で並べなければいけない」というルールがある(正確に言うと山なりになるよう、外側にいくほど小さくなるよう並べる)。これらのルールの意図は明確で、要は他人がジュリエットのカードの位置を推理できるようにするための仕組みだ。そして、一方で、その推理を混乱させるために、「手札の並べ替えができる」特殊効果のカードがある。しかし、これらのルールだけを聞くと、なんとも不自然な印象を受けてしまう。つまり、いかにもゲームのために無理やり導入され、不器用に合体させられた産物のように最初は思われた。


しかし、プレイしてみると意外にこれが自然で、何より楽しい。やるべきことが頭の中にスッと入ってくる。ゲームというのは、つくづくプレイしてみないと分からない。プレイし終えて、「これも全然ありだな」と思い直した。


ただ個人的に、少し残念だと思ったのは、プレイ人数が多かったためか「ババ抜きの快感」があまり感じられなかったところだ。ババ抜きの「ペアを作って捨てる」アクションというのは、それ自体とても気持ちがいい行為だと思っている。プレイ人数が多いほど、同じ柄の2枚のカードセットが成立しにくくなる気がしたので、もう少し「ペアを作って捨てる」快感があってもいいかな、と感じた。(ちなみにBGGでも2人プレイがベスト、オススメは2~3人となっている)



評価★★☆☆とした理由……相手の手を予想するのも、逃げ切ろうとする時の緊張感も中々面白い。ただ、面白さの焦点がどこに当たっているのか、少しぼやけているような印象も持った。評価するには、プレイ人数を変えるなどして、もう少しプレイしてみないといけない気もしている。

2014年5月14日 (水)

【ボードゲームレビュー】太陽と月 ★★☆☆

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評価:★★☆☆[2/4](4人プレイの評価です)

プレイ人数:2~4人

プレイ時間:20分


アートワークの力。

簡単なゲームの流れ

  • ①2人1組みのチームを組む。各プレイヤーは自分の前にそれぞれカードを出す場を持つ。
  • ②自分の手番で、カードを一枚、自分を含めたどのプレイヤーの場にも出すことが出来る。
  • ③ただし、既に出されたカードに隣接させて、右隣なら大きい数字、左隣なら小さい数字になるように出さなくてはならない。
  • ④5枚以上自分の場にカードが並べば、得点化できる。
  • ⑤得点をより多く得たチームの勝利。

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ゲームの総評

アートワークが素晴らしい。この魅力だけで遊べる。少し乱暴だが、そう言ってしまえる魅力が「太陽と月」にはある。


二人一組になる対戦ゲームというのは、システム自体に楽しむための大きなアドバンテージがある。「ごいた」や「ブラックスワン」でもそうだったが、協力と対戦が一緒になっているため、対戦相手と仲間との二種類のコミュニケーションが一度に楽しめる。


例えば、このゲームでは、対戦相手に直接的な攻撃をすることができる。自分の手番で相手のスペースにカードを置く。これはいわゆる妨害行為で、明確な直接攻撃だ。カードのイラストは、アフリカの大地のような悠然としたイメージでありながら、こうした攻撃的なスタイルがこのゲームの醍醐味だ。しかし、直接攻撃とはいえ、自分一人で戦うわけではない。とても不思議だが、仲間がいると誰かを直接攻撃する際のシビアな感じが若干やわらぐ。「よーし、これで邪魔してやるぜ!」「いいね!」という仲間とのやりとりが、場の雰囲気を和ませてくれる。チーム戦には、そういう効果があるように思う。


また、開始直後は、勝負がワンサイドゲームになってしまうのではないかと危惧したが、終わってみれば意外に接戦になった。良い意味で、ゲーム全体から受ける印象と、具体的なゲーム体験とが微妙に食い違う。そんな不思議な感覚のゲームだ。ゲームデザインは、ごきぶりポーカーの作者(Jacques Zeimet)だと聞いて、「ほー」と妙に感心してしまった。(ちなみに、本作のアートワーク担当のJohann Rüttinger氏はゲームデザインにも携わっているようだ)


評価★★☆☆とした理由……アートワークの魅力が突出している。一方、「こう出すしかないかな」と思うことも多く、ゲームとして不自由さを感じることはある。ただ、仲間とのコミュニケーションが楽しく、嫌な息苦しさは感じない。ギリギリのところで色々な要素が綺麗に成立しているゲーム、という印象。

2014年5月 2日 (金)

【ボードゲームレビュー】犯人は踊る ★★☆☆

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評価:★★☆☆[2/4](5人、7人、8人プレイの評価です)

プレイ人数:3~8人

プレイ時間:10分


犯人と踊る。

簡単なゲームの流れ

  • ①手札に配られたカードから各プレイヤーは一枚ずつカードを出す。
  • ②出したカードに書かれたアクションを実行する。(左隣の人にカードを渡す、とか、右隣の人に一枚任意にカードを取ってもらうとか)
  • ③探偵カードを出した人は、プレイヤーの誰が犯人カードを持っているか当てたら勝ち。
  • ④一方、犯人カードを持っている人は最後の一枚として犯人カードを出せたら、勝ち。
  • ⑤カードのアクションを駆使しながら、犯人か探偵としての勝利を目指す。

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ゲームの総評


自分が犯人カードを持っている時に、それを指摘されると負けてしまう。このコンセプトが実に分かりやすく、そして懐かしい。言ってみれば、犯人カードはエンガチョだ。


このゲームは鬼ごっこという遊びが、なぜあんなにも興奮させてくれたのかを思い出させてくれる。鬼ごっこは追跡や逃走という身体的なアクティビティだけが、その魅力ではない。鬼(エンガチョ)が、特異点となって空間を歪ませる。その歪みに翻弄されることもまた面白いのだ。鬼の周辺に生じる「空間の捩じれ」のようなものが「犯人は踊る」にも通じる楽しさであるように思う。


「あのヘンで犯人カードがまわされているぞ……」という空気が、なぜか伝わる不思議。そこに人は「捩じれ」のようなものを見る。それはとても主観的だったり、思い込みでしかなかったりするかもしれない。しかしそれでもいい。単なるカンが当たれば楽しい。カンが外れれば、また別の場所が「捩じれ」となって現れる。しかも、それはすぐ隣かもしれない。


自分に犯人カードが回ってきた瞬間に、自分も犯人になりうるという当たり前の事実に気づく。ついさっきまで犯人を見つける側であり、優位な立場にいたはずの自分が一転、逃げる側になる。この落差が面白い。


このゲームは大人数でプレイすることで真価を発揮する。少人数では相対的に「捩じれ」が小さくなってしまう。対岸の火事を見るような余裕と、気づくと自分の尻に火がついていたような緊張感との落差を感じるには、それなりの人数が必要だ。


もう一つ、人数が多い方がいいなと思った理由は、手番の順番についてだ。アナログゲームでは、手番の順番が結構シビアな問題になる。最初に手番を行なう人と、一巡の最後に手番を実行する人との間で、理不尽に差が付いてはいけない。しかし、少人数でプレイすると、場合によっては、とても手番の順番に理不尽さを感じるゲーム展開になってしまうことがある。あまり勝ち負けに拘らないエンガチョゲームとしてなら、ぜひとも大人数でプレイすべきだろう。


正体隠匿系の中でも、とてもライトなゲームとして遊ぶこともできるが、「犯人は踊る」は、まさにそのタイトルが示すように、「踊らにゃ損」なパーティゲームとして本領を発揮するのではないかと思う。


評価★★☆☆とした理由……何より分かりやすいのがいい。とはいえ、推理モノとしては若干の物足りなさを感じる。まあ、このゲームの遊ばれるシーンを考えると、逆にそれは長所なのかもしれない。

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