【ボードゲームレビュー】ククカード ★★★☆
評価:★★★☆[3/4](8人プレイの評価です)
プレイ人数:5~15人
プレイ時間:30分
「そこでは何かが光っていた。」
簡単なゲームの流れ
- ①各プレイヤーにカードが一枚配られる。
- ②親の右隣から順番に、自分のカードを右隣の人と交換するか選択する。
- ③手番は順番に右隣に移っていく。最後の人は、自分のカードを山札の一番上のカードと交換するか選択する。
- ④最後、カードを全員でオープンし、最も弱いカードの人が手持ちのコインを支払う。
- ⑤何ラウンドか繰り返し、最もコインを集めた人が勝利。
ゲームの総評
カンビオというルールのゲームを遊んだ。クク(カード)を使ったゲームは色々あるが、日本ではおそらくこのカンビオが最もメジャーだろう。カンビオは「たった1枚の手札を交換するか選択する」という、とてつもなく単純なゲームだ。カンビオ(cambio)とはイタリア語で『交換』を意味する。
実際にプレイしてみると、そのルールの美しさに言葉を失う。本当にたった一枚。そのたった一枚をどうするか、そこにちゃんとジレンマがある。見方によっては、手にするカードの枚数はラブレターよりも少ないと言える。これでもちゃんと面白いゲームが成立するのだから驚く。伝統的なゲームの持つ凄みというのはこういうところにある。何回かラウンドをまわすうちに、ルールを理解し始めたメンバーの表情が変わっていく。その様子に、久しぶりに鳥肌が立つ思いがした。
このゲームを日本で紹介、普及させた第一人者である草場純氏の次の文章がクク(カンビオ)の魅力をとても端的に伝えている。次の一文が特に美しい。
ルールを説明して、1ディール目はよく分からず、ルールに従ってプレイした。2ディール目に、「チェンジの後のノーチェンジ」が起こり、ゲーム慣れしている五人のプレーヤーは、瞬時に何が起こったか悟った。 ---「私はいかにしてククカードを作ったか。」-ゲーム研究家・草場純さんの研究を収集するサイト |
いやぁ、このシーン。読んだだけでも、もう自分がその場にいるかのような錯覚を覚える。「チェンジの後のノーチェンジ」。何かが起こるのは、まさにこの瞬間である。実際にプレイしたことのある人には分かっていただけるだろう。しかし、この「やらないと分からない面白さ」とは一体なんなんだろうか。「あー!そういうことか」というワンダーな体験。こういう体験は「ゲームをプレイした者の特権」だろう。見ていては得られない。「頭で分かること」では分からない。
草場氏の記事に書かれているように、ククは誰か個人の意思によってデザインされたゲームではないのだろう。同じシンプルなゲームであっても、「ハゲタカのえじき」や「ニムト」のような美しさとは異なる。草場氏が語るようにこのゲームを作ったのはおそらくフォークロア(民間伝承、風習)だろう。時代の変遷や淘汰の中で磨かれた一筋縄ではいかない美しさがある。長い時間を生き延びてきた泥臭さ、そして強靭さがある。
最後に、また草場氏の記事から言葉を引用して、この記事を閉じよう。これ以上の言葉を綴る自信がない。読んでない人は是非、引用先の記事を読んでいただければと思う。
「これ、面白いじゃないか!」 私は私の浅はかさを恥じるとともに、ゲームという宇宙の、秘密を一つ垣間見た気がした。 ---「私はいかにしてククカードを作ったか。」-ゲーム研究家・草場純さんの研究を収集するサイト |
評価★★★☆とした理由……素晴らしいゲーム。一度はみんな体験してみるべきだろう。あと、邪道と言われるかもしれないが、「賭けて遊ぶ」が正しい遊び方のように強く感じた。なかなかオープンなボードゲーム会ではできないことだろうが、正直なところそう思っている。そんなわけで(正しく遊べてないと思うので)、二つ星(★★)とすべきじゃないかと悩んだが、やはりゲーム自体の魅力は一級品だと思うので、この評価とした。
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