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2014年9月

2014年9月27日 (土)

【ボードゲームレビュー】Gods' Gambit ~神々の一手~ ★★☆☆

Gods_gambit_01


評価:★★☆☆[2/4](5人プレイの評価です)

プレイ人数:2~6人

プレイ時間:20分


神の一手は重い。


簡単なゲームの流れ


  • ①色(スート)と数字の付いたカードを手札に持つ。
  • ②カードを捨て札として出す(解消する)時は、カードに書いてある能力は使えない。
  • ③自分の持ち場にカードを出す(使役する)時に、各カードの能力を利用できる。
  • ④誰かが手札を全て出すか、特定のカードが4枚山札から引かれたら1ラウンド終了。
  • ⑤使役して残ったカードと手札に残ったカードの数字が失点。3ラウンドして、最も失点の少ない人が勝ち。

Gods_gambit_02



ゲームの総評

基本ルールはUNO(ウノ)だが、自分専用の持ち場があり、そこにカードを出すことでカードの能力を使うことが出来る。UNOのように共通場に捨て札としてカードを出すこともできるが、その場合はカードの固有の能力は発揮できないところがポイントだ。


カードの能力としては、任意の相手の手札を増やしたり、順番を飛ばしたりする妨害・攻撃系カード以外に、相手の攻撃を無効化する防御系カードもある。


当然、単に捨て札として出すより、自分の持ち場に出した方がカードの特殊能力が使えて有利だ。しかし自分の持ち場に出したカードは、最後に失点として扱われてしまう。しかし、持ち場に出したカードの失点を解消できる支援系カードというものもある。このカードとセットで能力を使うこともできる。しかし失点を解消する一番の方法は、一番最初に手札をなくすことだ。一番最初に手札をなくすと持ち場に出したカードも失点にならない。早く手札をなくすことを考えるか、能力を駆使し相手に失点を重ねさせて追い込むか。色々と特殊能力があり、ややこしそうにも思うが、意外に考えるべきところははっきりしていて、分かりやすい。


このゲームをプレイすると、改めてUNOの楽しさとはなんだったんだろうということを考える。思ったのは、次々とカードを出して行くスピード感こそがUNOの楽しさだったのだろうということ。Gods' Gambitでは(特に初回プレイでは)UNOのようなテンポの良さはない。しかし、カードを出すたびに「むむっ……」と悩むのは楽しい。あまりに当たり前のことかもしれないが、本作はUNOとは違うゲームなので、違う楽しさなのだと分けて考えるべきなのだろう。


とは言え、インスト時にこのゲームを「UNOのようなゲーム」と言わないで説明するのもまた難しい。そしてこう言ってしまうと、「UNOのようなゲームの楽しさがあるのでは?」という先入観を初プレイ時に与えてしまうこともあるだろう。UNOのようなスピード感や気軽さがないことは、本来ならこのゲームの評価を低める要素ではない。しかし単純にUNOと比較してしまうと、このゲームを上手く味わうことができないかもしれない。


ゲーム体験は時にとても繊細だと思うことがある。しかし、様々なゲーム経験があり、経験値の高いベテランゲーマーであれば、早い段階でこのゲームの面白さを感得できるだろう。知識と経験は、色々なゲームを多面的に捉えるときの道具になる。ベテランというと、頭の固い人をイメージする人もいるかもしれないが、むしろ逆なのではないか。知識や経験こそが、ゲームを味わう上で「自由」を与えてくれる。逆に、経験値の低い僕などは「UNOのようなゲーム」という言葉に囚われてしまった。


「どのようにUNOに似ているのか」という観点よりも「どのようにUNOと違うのか」という観点でGods' Gambitには臨んだ方が良いのではないかと感じた。次は少し頭を切り換えて、もう一度プレイしたい。



評価★★☆☆とした理由……ルールが分かってくると面白い。ただ、一発目のつかみは弱いように思った。今後、更にプレイする機会もあるだろうと思うので、その際はまたレビューを見直したいと思う。

2014年9月14日 (日)

【ボードゲームレビュー】想像と言葉 ★★☆☆

Imagine_word_01


評価:★★☆☆[2/4](7人プレイの評価です)

プレイ人数:3~12人

プレイ時間:45分


コンポーネントの力。


簡単なゲームの流れ


  • ①袋にはタイルが大量に入っている。タイルには言葉が1つ書かれている。
  • ②タイルを3枚取り、その3つの言葉から連想される言葉を各自が書く。
  • ③親だけは、2つの言葉を書く。
  • ④全員の書いた言葉を公開して、同じ言葉を書いた人同士はポイントを獲得できる。
  • ⑤最も多くのポイントを取った人が勝ち。また、ポイントとは無関係に面白い言葉を連想した人には想像王の称号が送られる。

Imagine_word_02



ゲームの総評

むき出しのゲームだ。箱もなく、袋に入れられて販売されたその形状と同じように、そのゲーム自体もまた「むき出し」だと感じた。


3つの言葉から新たな言葉を連想する。その言葉が他の人が連想した言葉と合致したらポイントになる。とてもシンプルすぎてなんとも言えない。特徴的なのは想像王というコマだろう。たとえポイントにならなくても、「面白い!」と思える言葉を連想した人には想像王のコマが与えられる。このコマは勝ち抜き制度になっており、より面白い言葉を連想した人へと、次々と想像王のコマは移っていく。


このゲームのまず面白いところはコンポーネントだ。コンポーネントは2cm四方程度の小さな長方形のタイル。表に言葉、裏にはその言葉を連想させるイラストが遠慮がちに描かれている。この裏の図柄は、高級チョコレートのようにも見える。このコンポーネントが美しいので、不思議と触っていたくなる。手でもてあそびたくなるコンポーネントというのはステキだ。


ゲーム自体が面白いかというと別にそれほどでもない。まあ、人としゃべること自体は当然面白いので、そういうコミュニケーション的楽しみはある。ただ、このゲームをプレイしていると、「こうしたらどうかな」とか「こういうルールにしようか」なんて言葉が自然と口をついて出そうになる。このゲームは、ゲームをより面白いものにするためにはどうするか、それを考えるための原石のような存在だと感じた。別のゲームを生み出す発生装置としてのゲーム、といった感じだ。「面白いって何だろう」と考える事は確実に「面白いこと」かもしれない。


想像王のコマなどは、勝利というゲームにとって重要な仕組みから明らかに外れた要素としてあえて組み込まれている。このコマを付加することで、ゲームが開いたものになる。場合によっては、勝敗を争うのではなく、想像王を争う展開になることもあるだろう。「想像と言葉」はそういうゲームの「外」に出ていく危うさを積極的に促そうとしているように思う。


「さあやるぞ」と気負いとともに向かい合うゲームがある一方で、「想像と言葉」のように他人と一緒に佇むためのゲームというのもある。このゲームは、同じテレビ番組を他人と一緒に見るような感覚で付き合うのがいい。リビングに置いてあっても素敵かもしれない。



評価★★☆☆とした理由……なんというか、そんなに面白いわけじゃないけど、仄かに楽しい。めちゃくちゃ面白いのではなく、そうした仄かな楽しさが適した場面というのもあるだろう。また、モノとして素敵なので、所有したくなる作品。

2014年9月 7日 (日)

【ボードゲームレビュー】ダンジョンオブマンダム ★★★☆

Dungeon_of_mandom_01


評価:★★★☆[3/4](4人プレイの評価です)

プレイ人数:2~4人

プレイ時間:30分


ファントムオブマンダム。


簡単なゲームの流れ


  • ①山札から順番にプレイヤーはモンスターのカードを一枚ずつ取る。
  • ②山札からカードを取った後、プレイヤーは二つの選択肢を採りうる。1つは、山札から取ったモンスターのカードをゲームから除外して(ダンジョンには配置しないで)、勇者の装備を1つ外す。
  • ③もう1つの選択肢は、そのモンスターカードをダンジョンに配置する。
  • ④山札からカードを取ることをパスせずに、最後の一人まで残ったら、その時残っている装備だけでダンジョンに突入する。
  • ⑤ダンジョンで2回やられたらゲームから脱落。最後の一人として生き残るか、ダンジョンから2回生還したら勝ち。

Dungeon_of_mandom_02



ゲームの総評

凄く面白かった。初プレイの後は、少しだけ興奮状態だった。そのぐらい夢中になってしまった。しかし冷静に考えてみると、また違った風にも見えてくる。ダンジョンオブマンダムは不思議な二面性を見せるゲームでもある。


初プレイでたまたま、僕は2回ダンジョンから生還して勝利することができた。他プレイヤーを脱落させて勝ったのではなく、自ら危険に突き進んで勝てたわけで、これはある意味最高に気持ちが良い勝ち方だったと言える。


なので、余計に不安になってしまった。つまりこれ、多くの場合「他人をダンジョンで殺すゲーム」になってるんだろうと。他人の脱落を促すゲームなのだ。自分が最高に楽しかった分、それは偶然でしかないように思われる。実際、相手を脱落させる展開であっても、手番の順番など偶然に左右される部分が非常に大きく、運がモノを言い過ぎる気がした。コンポーネントやテーマなど、それが魅力的であるから一層、ゲームとしては微妙に思ってしまった。それは、こうした「運ゲー」としての部分が気になったからだ。


もちろん、「運ゲー」だから駄目だとは単純に言えない。「運ゲー」という言葉は非難の言葉として使われることが多いが、一方で、「運ゲー」の魅力というものもまた確実に存在しているからだ。


考えるに、ダンジョンオブマンダムというゲームの凄さは、そうした「運ゲー要素」を糊塗し隠すのではなく、むしろ堂々と前面に押し出し、ある意味「透明化しきった」ところにあるように思う。本作では「運ゲー要素」が他のアナログゲームとは少し異なるフレイバーとしてゲーム全体に組み込まれている。「キレイな運ゲー」というものがあるとしたら、ダンジョンオブマンダムはまさにそういう作品であるように思われる。


例えば、本作は、各種アイテムやモンスターから算出される勝利への期待値を「計算させない」ように上手くプレイヤーを誘導している。タイトルにある「マンダム」という言葉は、非効率の代名詞のような言葉だ。計算などする奴は「男らしくない」のであり、これはアナログゲーム本来の楽しみである「考えること」を根本から否定しかねない。しかし本作では、その「考えないこと」が実にキレイにゲームになっている。


よく「運要素は負けた自分への言い訳になるから初心者に優しいのだ」という話がある。ダンジョンオブマンダムにおける「運ゲー要素」はそうした通常の利点だけに留まらない。普段から冷徹に勝利を目指してしまう生真面目なゲーマーを「時にはバカになっていいんだよ」と優しく誘惑してくれる。運ゲー要素を持つ名作の多くは、ゲームに慣れない人も広く受け入れるが、ダンジョンオブマンダムはむしろゲームが好きで色々とやってきたベテランに向けて、再び運の世界に身を投じる甘い誘いを投げかけてくる。


素直に勝利を求めるなら、おそらく「パスする」ことこそが効率的で正しい選択肢になる。しかし、そうした冷静で大人な態度の価値をあえて低めに置く。そして、子供っぽい「バカになる気持ちよさ」を掻き立てる。ダンジョンやありがちな装備アイテムやベタなモンスターという道具立て(そして500円ゲームズでの8bit表現)は、全て、そういう「ノスタルジックな気持ちよさ」へと結びついている。ダンジョンオブマンダムは、ゲーマーが安心してその身を委ねて甘えることができる作品である。


この「バカっぽさ」の感覚は「髑髏と薔薇」というゲームが暴走族の抗争という、これまた極めて「バカっぽい」テーマであったセンスと近いのかもしれない。最近流行りの言葉で言えば、ヤンキー文化っぽい。しかし単にヤンキーっぽいだけでなく、ダンジョンオブマンダムはどこか冷静で理性的にも感じられる。このゲームのメカニクスが手堅さが、その「バカっぽさ」と「知的さ」の複合的なイメージに一役買っているのだろう。


ちなみに、英語の辞書に「男らしさ」を意味する"MANDOM"という単語はない。この単語は幽霊のように実体がない言葉だ。しかし、そのこともまた、逆にこのゲームの理性的なセンスを象徴している。「分かった上であえてやる」。そんな少しだけ捻れた大人の嗜好をくすぐる魅力が、ダンジョンオブマンダムにはあふれている。



評価★★★☆とした理由……当初はこれよりも低い評価にしようかと思った。しかし、このゲームの持つ魅力は、無二なのではないかと思い、考え直した。傑作だと思う。

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