« 【海外記事翻訳】ドミニオンは複雑すぎた?!審査員長が語るドイツ年間ゲーム大賞の内幕 | トップページ | 【ボードゲームレビュー】想像と言葉 ★★☆☆ »

2014年9月 7日 (日)

【ボードゲームレビュー】ダンジョンオブマンダム ★★★☆

Dungeon_of_mandom_01


評価:★★★☆[3/4](4人プレイの評価です)

プレイ人数:2~4人

プレイ時間:30分


ファントムオブマンダム。


簡単なゲームの流れ


  • ①山札から順番にプレイヤーはモンスターのカードを一枚ずつ取る。
  • ②山札からカードを取った後、プレイヤーは二つの選択肢を採りうる。1つは、山札から取ったモンスターのカードをゲームから除外して(ダンジョンには配置しないで)、勇者の装備を1つ外す。
  • ③もう1つの選択肢は、そのモンスターカードをダンジョンに配置する。
  • ④山札からカードを取ることをパスせずに、最後の一人まで残ったら、その時残っている装備だけでダンジョンに突入する。
  • ⑤ダンジョンで2回やられたらゲームから脱落。最後の一人として生き残るか、ダンジョンから2回生還したら勝ち。

Dungeon_of_mandom_02



ゲームの総評

凄く面白かった。初プレイの後は、少しだけ興奮状態だった。そのぐらい夢中になってしまった。しかし冷静に考えてみると、また違った風にも見えてくる。ダンジョンオブマンダムは不思議な二面性を見せるゲームでもある。


初プレイでたまたま、僕は2回ダンジョンから生還して勝利することができた。他プレイヤーを脱落させて勝ったのではなく、自ら危険に突き進んで勝てたわけで、これはある意味最高に気持ちが良い勝ち方だったと言える。


なので、余計に不安になってしまった。つまりこれ、多くの場合「他人をダンジョンで殺すゲーム」になってるんだろうと。他人の脱落を促すゲームなのだ。自分が最高に楽しかった分、それは偶然でしかないように思われる。実際、相手を脱落させる展開であっても、手番の順番など偶然に左右される部分が非常に大きく、運がモノを言い過ぎる気がした。コンポーネントやテーマなど、それが魅力的であるから一層、ゲームとしては微妙に思ってしまった。それは、こうした「運ゲー」としての部分が気になったからだ。


もちろん、「運ゲー」だから駄目だとは単純に言えない。「運ゲー」という言葉は非難の言葉として使われることが多いが、一方で、「運ゲー」の魅力というものもまた確実に存在しているからだ。


考えるに、ダンジョンオブマンダムというゲームの凄さは、そうした「運ゲー要素」を糊塗し隠すのではなく、むしろ堂々と前面に押し出し、ある意味「透明化しきった」ところにあるように思う。本作では「運ゲー要素」が他のアナログゲームとは少し異なるフレイバーとしてゲーム全体に組み込まれている。「キレイな運ゲー」というものがあるとしたら、ダンジョンオブマンダムはまさにそういう作品であるように思われる。


例えば、本作は、各種アイテムやモンスターから算出される勝利への期待値を「計算させない」ように上手くプレイヤーを誘導している。タイトルにある「マンダム」という言葉は、非効率の代名詞のような言葉だ。計算などする奴は「男らしくない」のであり、これはアナログゲーム本来の楽しみである「考えること」を根本から否定しかねない。しかし本作では、その「考えないこと」が実にキレイにゲームになっている。


よく「運要素は負けた自分への言い訳になるから初心者に優しいのだ」という話がある。ダンジョンオブマンダムにおける「運ゲー要素」はそうした通常の利点だけに留まらない。普段から冷徹に勝利を目指してしまう生真面目なゲーマーを「時にはバカになっていいんだよ」と優しく誘惑してくれる。運ゲー要素を持つ名作の多くは、ゲームに慣れない人も広く受け入れるが、ダンジョンオブマンダムはむしろゲームが好きで色々とやってきたベテランに向けて、再び運の世界に身を投じる甘い誘いを投げかけてくる。


素直に勝利を求めるなら、おそらく「パスする」ことこそが効率的で正しい選択肢になる。しかし、そうした冷静で大人な態度の価値をあえて低めに置く。そして、子供っぽい「バカになる気持ちよさ」を掻き立てる。ダンジョンやありがちな装備アイテムやベタなモンスターという道具立て(そして500円ゲームズでの8bit表現)は、全て、そういう「ノスタルジックな気持ちよさ」へと結びついている。ダンジョンオブマンダムは、ゲーマーが安心してその身を委ねて甘えることができる作品である。


この「バカっぽさ」の感覚は「髑髏と薔薇」というゲームが暴走族の抗争という、これまた極めて「バカっぽい」テーマであったセンスと近いのかもしれない。最近流行りの言葉で言えば、ヤンキー文化っぽい。しかし単にヤンキーっぽいだけでなく、ダンジョンオブマンダムはどこか冷静で理性的にも感じられる。このゲームのメカニクスが手堅さが、その「バカっぽさ」と「知的さ」の複合的なイメージに一役買っているのだろう。


ちなみに、英語の辞書に「男らしさ」を意味する"MANDOM"という単語はない。この単語は幽霊のように実体がない言葉だ。しかし、そのこともまた、逆にこのゲームの理性的なセンスを象徴している。「分かった上であえてやる」。そんな少しだけ捻れた大人の嗜好をくすぐる魅力が、ダンジョンオブマンダムにはあふれている。



評価★★★☆とした理由……当初はこれよりも低い評価にしようかと思った。しかし、このゲームの持つ魅力は、無二なのではないかと思い、考え直した。傑作だと思う。

« 【海外記事翻訳】ドミニオンは複雑すぎた?!審査員長が語るドイツ年間ゲーム大賞の内幕 | トップページ | 【ボードゲームレビュー】想像と言葉 ★★☆☆ »

ボードゲームレビュー」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 【ボードゲームレビュー】ダンジョンオブマンダム ★★★☆:

« 【海外記事翻訳】ドミニオンは複雑すぎた?!審査員長が語るドイツ年間ゲーム大賞の内幕 | トップページ | 【ボードゲームレビュー】想像と言葉 ★★☆☆ »