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2014年10月

2014年10月12日 (日)

【ボードゲームレビュー】アンギャルド ★★☆☆

En_garde_01


評価:★★☆☆[2/4](2人プレイの評価です)

プレイ人数:2人

プレイ時間:30分


攻防の快感。


簡単なゲームの流れ


  • ①手札は5枚。カードには1~5の数字が書かれている。
  • ②自分と相手のコマはそれぞれボードの両端にあり、手札から出したカードの数字に従って、コマをお互い前進させる。
  • ③ボードの真ん中あたりで、コマが重なる時に戦闘が発生する。相手の場所にちょうど到達できる数字のカードを出すと攻撃になる。
  • ④攻撃されたら、後退するなり、避けるなどして防御をする。攻撃を防御しきれなければ、攻撃側が1ポイントを得る。
  • ⑤最初に5ポイントの得点を得た方が勝ち。

En_garde_02



ゲームの総評

個人的な趣味嗜好として、パリィのできるゲームが好きだ。なぜパリィがこんなに好きなのかよく分からない。ちなみにパリィとは、相手の剣や刃物による攻撃を「受け流す」行為をパリィ(parry)という。


テレビゲームの世界だと、剣が出てくるようなゲームではパリィがシステムとして組み込まれていることが良くある。たいていは相手の攻撃に合わせてタイミング良くボタンを押すと、相手の攻撃を受け流すことができる。相手の動きを「見切る」という感覚に近い。


パリィの美しさは、それが単なる防御でも、回避でもないことにある。大きく後退することも、また楯などで物理的に相手の攻撃を無理やり受け止めるのでもない。相手の攻撃が「なかったことになる」華麗さをパリィは持っている。パリィはたいてい簡単にできない。『アンギャルド』には、そうしたパリィの難しさとその難しさから醸し出されるチャンスがちゃんと表現されている。見事パリィを成功させると、一転それは攻撃のチャンスになる。まさにパリィはリスクとリターンの美しい結節点になっている。


2人用ゲームはとかくガチになりがちだと言われる。これは確かにあって、3人以上で遊ぶゲームにはない窮屈さを感じることはある。2人の場合、自分が有利になることは、漏れなく相手にとって不利になるからだ。しかしフェンシングという一瞬で決着がつく競技においては、このガチさがいい緊迫感になっている。1回の勝負は短く、2人対戦の窮屈さが、むしろ静と動の興奮へと綺麗に昇華されているように思う。


また、1ラウンドが終わると、2ラウンド目に持ち越されるようなものがほとんどない点もいい。次のラウンドは心機一転、また一から相手と向き合う。途中で諦めるのではなく、たとえ1:4というような追い詰められたような状況でも、勝ちを信じて次の勝負に向かうことができる。


今回、New Games Orderさんにより日本語版が新たにリリースされたが、非常にシンプルなコンポーネントになっている。人によっては、旧来のコマやボード(ペガサス版など)と比べて地味だと感じるかもしれない。しかし個人的にはかなり気に入っている。小さい箱に収まっているのもいい。お好みでコマだけ自分の好きなものを用意してもいいかもしれない。


やはり2人用ゲームということで、クニツィアの名作『バトルライン』と比べてしまうが、やはりあちらの方が、派手で分かりやすい楽しさがあると思う。こちらはどうしても地味になりがちだ。ただ、バトルラインよりもその美しさという点においては引けを取らない作品ではないかと思う。



評価★★☆☆とした理由……このゲームはかなり「人読み」の部分が多いと思う。できれば、お互いによく知った人同士でプレイする方がいいかもしれない。逆に言えば、その点がバトルラインよりもプレイする人や状況を選ぶかなとは感じた。あと、プレイ全体が地味になりがちではある。

2014年10月 5日 (日)

【ボードゲームレビュー】成敗 ★★☆☆

Seibai_01


評価:★★☆☆[2/4](6人プレイの評価です)

プレイ人数:3~8人

プレイ時間:60分


天誅。


簡単なゲームの流れ


  • ①プレイヤーは悪人を誅する仕事人。ターゲットとなる悪人もプレイヤーと同数登場する。
  • ②各プレイヤーは10ポイントのアクションポイントをもつ。10のアクションポイントを消費しながら、悪人を葬るための準備をする。
  • ③アクション内容としては、悪人に対する情報収集を行ったり、自らの能力を強化することなどができる。
  • ④すべてのプレイヤーがアクションポイントを消費したら、成敗のフェーズ。各プレイヤーの攻撃力・体力と悪人のそれとを比較して、成敗が上手くいったかどうかを判定する。
  • ⑤全悪人を全員で協力して倒せたら勝利。

Seibai_02



ゲームの総評

テーマが良い。必殺仕事人というドラマが好きだったので、『成敗』のテーマには以前から惹かれていた。仕事人というモチーフの魅力は、単なる勧善懲悪ではない。悪を討つのが、町人というとても身近な存在であることもまた魅力であるように思う(もちろん中村主水は役人だが、あくまで「しがない小役人」だ)。つまり、「できるなら私が悪を討ちたい」という欲求を満たすのが、仕事人的なテーマ。副将軍や奉行様ではなくて、できる限り「私が討つ」ことに意味がある。


そんなわけで、仕事人というのは、とてもゲームに向いているテーマだと思うのだけど、意外にこれをテーマにしたゲームは少ない気もする。TVゲームであれば、昔、必殺仕事人のRPGがあったし、『天誅』というアクションゲームの中にも仕事人風のキャラクターが活躍するエピソードもあった。しかし、全体的な数としては少ないように思う。そんなわけで、仕事人への飢えを満たしてくれる『成敗』というゲームは、それだけで、僕にとっては貴重な作品だ。


『成敗』は、協力ゲームだ。難易度は高い。プレイヤーと同数の全悪人を成敗することが目標だが、これがかなり難しい。一人の悪人に一人のプレイヤーが対峙するので、クリアするためには誰も失敗ができない。おそらく慣れないうちは、6人中4人まではなんとか討てました、というような結果に終わることが多いと思う。そんなわけで、最初は「かなり無理ゲーっぽいぞ」と思う。しかし、そこはさすがのカナイ製作所。よく出来ていて、「お、これはいけるんじゃね?」と中盤あたりに期待を抱かせたりもする。討つべき敵の情報を探索しているうちに、場合によっては、敵を「討たないこと」が目的になったりする。一方で、こちらが不利になるようなイベントも多く発生する。ゲームの展開に一筋縄ではいかない起伏があるところは素晴らしい。


協力ゲームは、必然的にコミュニケーションのゲームだ。『成敗』でも、自分が探索した敵のカードの内容をそのまま他人に伝えてはいけない。この手のルールは協力ゲームではよくある。協力ゲームの名作「パンデミック」でも、自分の手札をそのまま仲間に見せてはいけない。ただ、このあたりのルールはプレイする仲間同士で適度に運用されるのがいいだろう。厳しくしてもいいし、もっと緩やかにしてもいいと思う。


ゲームの途中で「これはクリアできないぞ」と分かることが結構ある。どう計算しても、敵を全員討てない事が分かる。こうした時に、どのように遊ぶか、という点はこのゲームを楽しむための勘所であるかもしれない。途中から目標を「全員の敵を討つ」から「○○を除いて、残りは全員討とう」となることもあるだろう。できる限り、この辺りを柔軟に遊ぶ方が、このゲームをより楽しめると思う。


先ほどの情報の伝達ルールと同じで、コミュニケーションのゲームというのは、どうしてもゲーム空間の外に漏れ出る部分が存在してしまう。目標を達成することを重視したい人には、途中での目標変更にテンションがダダ下がりする危険もある。そこは趣味の問題であり、難しいところかもしれない。しかしこのあたりの「ゲーム外の調整」にこそ、協力ゲームの醍醐味はあるような気もする。


評価★★☆☆とした理由……テーマが好きなので、それだけで僕としては満足するが、開始直後からプレッシャーが強い展開で、なかなか人を選ぶゲームかもしれない。時間もそれなりに掛かる。

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