【ボードゲームレビュー】コンコルディア ★★☆☆
評価:★★☆☆[2/4](5人プレイの評価です)
プレイ人数:2~5人
プレイ時間:90分
女神のおばさん。
簡単なゲームの流れ
- ①倉庫に麦やワインなどの資源を持ってスタート。
- ②手札のカードには、プレイヤーが実行できるアクションが書かれている。
- ③地中海を舞台にしたボードには、各都市や産出品が描かれている。
- ④カードを使い、各都市に自分の街を立てることで、資源を産出したりお金を獲得できる。そうした資源で更に街を建てたり、手持ちのカードを増やしていく。
- ⑤持っているカードの種類と建物の建設状況(建物数や支配している地域数など)によって、勝利点が算出される。最も勝利点を稼いだ人の勝ち。
ゲームの総評
比較的重くて長時間のゲームをプレイして思うのは「最後まで楽しく遊ばせる」というのは、どういうことなんだろうということ。本作は、最後まで勝敗がどうなっているのか分かりづらいため、気持ちが脱落しにくいというシステムもさることながら、こうした「プレイすること自体の楽しさ」も強く感じる快作だ。
ボードゲームには、テレビゲームのようなアクション的なスキルを競うための仕組みや派手な演出を取り込むことは難しい。プレイヤーのモチベーションを維持するためには、テレビゲームとは異なる工夫が必要になる。そうした工夫が盛り込まれた名作ボードゲームには、いわゆる勝敗とは別に、「プレイを進めること自体が楽しい」魅力が備わっていることが多い。
本作のデザイナーであるマック・ゲルツ。彼の『ナビゲーター』というゲームもそうだった。大航海時代の未踏地開拓の楽しさというのはとても魅力的だ。街を支配する。資源を算出する。また新たな街を開拓していく。ただこれを行うだけで楽しい。プリミティブな快感がそこにはある。おそらくこうした快感を、いかにストレートに味わせるか、そういう目的に特化した調整が施されている。コンコルディアもまた「プレイ自体を楽しませる」という目標に対してとても実直なゲームだ。
本作には、他のボードゲームで見られる様々な要素が、少しずつコンパクトになって取り入られている。例えば、カードを購入して持ち札を増やし、使い切ったらシャッフルして手札を再び取るという流れは、デッキ構築型ゲームを思わせる。またヨーロッパの各都市に早い者勝ちで建物を建設して行く様は陣取りゲームである。建物を置いた都市から資源を収穫して、それを売買取引し、資産を効率的に増やしていくのも、どこかで見たようなよくあるメカニクスと言えるだろう。しかし、こうした雑多な「良いとこ取り」が全くちぐはぐになっていない。ひとつ間違えると下品に見えかねないこうした「良いとこ取り」が、なぜそうはならないのだろうか。
その理由の一つが、実はコンポーネントデザインにあるのではないかと思っている。ついついコンコルディアのような様々なメカニクスが混合しているゲームに接すると、そのメカニクスに注目してしまいがちだ。しかし、実はもっと感性的なコンポーネントの「美しさ」がこのゲームの魅力を下支えしているのではないだろうか。
コンコルディアは地中海を中心としたヨーロッパがボードに描かれている。この地形図は、決して出来合いのものでも、ゲームのためだけに作られた独自のものでもない。我々の住む日常世界でも通用している実に「正統なデザイン」でもある。ただしその地図は決して近代的な製図法によって描かれた正しいだけの無機質な地図ではない。様々な魅惑を孕んだ歴史を感じさせる地図でもある。(思えば、同作者の「ナビゲーター」「インペリアル」「古代」もそうだ)
産出される資源も、毛織物やワイン、麦など、実に僕たちの想像力を豊かにしてくれる。それは単なる材料やリソースなのではなく、どこか地中海の風土を感じさせる。そしてそれを蓄えておく倉庫という存在。こじんまりとしながらも小さな宝箱のようで、控えめながら魅力的に映る。
コンコルディアでは、ボード、コマ、カードなどそのテーマ的なセンスの良さが決して強く主張したりはしないが、プレイヤーをこの世界に確実にいざなってくれる。心地よい想像力に浸ることができ、個々のメカニクスはあくまでその「想像力」へと使役されている。そのゲームの世界は常に少しだけ大人びている。そんな世界でプレイするという感覚。ゲルツは、テーマの消化のさせ方が実にニクイ。
様々なメカニクスが悪魔合体したようでありながら、その目的は素朴に「面白いゲーム体験を醸成しよう」とするところにある。コンコルディアは一見すると非常にドイツゲーム的なシステムに凝った作品でもあるのだが、そうである一方、「人間は何に魅力を感じるのか」を追求した感性的な作品なのではないだろうか。
評価★★☆☆とした理由……魅力溢れる作品。ゲームシステムもまた、多くの時間と労力によって調整されたのだろう。システムとビジュアルの幸せなカップリングを果たした名作。ただ、点数の見通しが悪いため、どのアクションが最も良いのか、(錯覚でもいいから)感じさせてくれるような要素が欲しかった。また、資源コマやお金のやり取りが若干煩雑かも。