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2015年3月 8日 (日)

【ボードゲームレビュー】宝石の煌き ★★★☆

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評価:★★★☆[3/4](4人プレイの評価です)

プレイ人数:2~4人

プレイ時間:30分


何が欲しいかが伝わるいやらしさ。


簡単なゲームの流れ


  • ①プレイヤーは手番で、5種類の宝石コインのうち、任意の3枚を取る(もしくは同じ種類2枚)。
  • ②または、持っている宝石でカード(発展カード)を獲得する。カードには恒常的に使える宝石が描かれる。
  • ③特定の組合わせの宝石のセットを集めると、貴族タイルが得られる。
  • ④誰かがカードや貴族タイルに書かれた勝利点を計15点以上集めたら、最終ターン。
  • ⑤最終ターン終了後に、最も勝利点を獲得した人の勝ち。

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ゲームの総評

面白い。この作品は凄い。それほど革新的なゲームメカニズムではないようにも思えるが、その徹底ぶりがスゴイのではないかと思う。


本作、サラリーとしての収入は最初から最後まで一定で、減ったりも増えたりもしない。他プレイヤーとの差もほぼない。そんなシステムでありながら、どういう風に他プレイヤーとの格差が生まれていくのか、そして、どういう風に他プレイヤーとインタラクションが発生するのか。買い物ゲームとしてはよくある仕組みながら、この点に本作の特徴がある。


通常の収入は宝石の描かれたコイン(ポーカーチップ)を獲得することで得る。そのコインを使って獲得するカード(発展カード)にも宝石が描かれており、これが「減らない資金源」として使える仕組みになっている。この「減らない資金源」をいかに効率よく集めるかが鍵であり、他プレイヤーとの差はその集め方に掛かっている。マーケットに並ぶカードは全て公開されており、全員が同じ商品を見ている。だから、どのカードがもっとも良いかは、端的にカード自体の質によって決定されるのではない。誰が何を選んだか(逆に何を選ばなかったか)が、カードの質に強く影響する。ボードゲームにおける買い物メカニズムというのは、よく「ソロプレイ感がある」と評されることがある。カードに描かれた効果をじっくり考えながら、自分にとって一番いい商品が何かを考え始めると、とかくそういう面が生まれてしまうのだろう。


しかし、「宝石の煌き」では、どの商品もたった1つしかなく、次々と買える商品が入れ替わっていく。1回の手番では収入を得るか、買い物をするかのどちらかしか選択できず、「何を買おうか」という悩みが自然と分散されることになる。そして、本作の買い物のインタラクションを更に強めている理由は、カードに書かれるパラメーターのシンプルさである。各カードに特殊な能力や効果があるわけではない。だからこそ自分が欲しいものや獲得したい目的がハッキリと他人にも伝わってしまう。そのためか、欲しいモノが他プレイヤーに取られると悔しくてしょうがない。目には見えない欲望の空中戦が繰り広げられることになる。1つの商品を買い争うボードゲームは他にもあるが、徹底してシンプルで状況がハッキリしているがゆえに買い物インタラクションの楽しみの精髄を味わっている感覚がある。


欲望の空中戦は買い物対象であるカードだけではない。その資金源であるところのコイン(ポーカーチップ)でも発生する。毎ターン得られるコインが各種全部で7枚しかない。1つの種類のコインを尽きさせてしまう行為は、そのコインを得るというアクションプレイスを専有する行為でもある。こうして、購買対象のカードだけでなく、資金源自体にもインタラクションが生まれる。本作は実にインタラクティブなゲームだ。黙々とプレイしてしまうよりも、悔しさや喜びを言葉に出してプレイできる環境の方が圧倒的に楽しいだろう。


「宝石の煌き」にはエキスが凝縮されている。雑味が全くない。特殊能力の組合せを考えたり、他人との交渉に悩んだり、資源の組合せに悩んだり。そういう「ごちゃっとした要素」がほとんどない。こうした雑味の無さはある意味プレイヤーを選ばないのではないかと思う。誰にとっても魅力的な宝石の数のみが意味を持つ。どこかアブストラクト的で、カードゲームっぽいストイックさを感じさせる。一方で、鈍くボディーブローのように効いてくるインタラクションが、ボードゲーム的な充足感も与えてくれる。本作の放つ強い煌きは、アナログゲームらしいシンプルさと濃厚さの両立から生まれるのだろうと思う。



評価★★★☆とした理由……これは欲しくなる一品。どういう楽しませ方をしてくれるのか、凄く分かりやすく、「いつでもどこでも誰でも遊べるゲーム」に思える。傑作。ただ、もしかしたら、かなり正解がハッキリしているゲームかもしれないという印象もある(もう少しプレイしてみないと分からないけど)。

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