【ボードゲームレビュー】dois ★★☆☆
評価:★★☆☆[2/4](4人プレイの評価です)
プレイ人数:3~4人
プレイ時間:30分
美しく粋なルール。
簡単なゲームの流れ
- ①1ラウンド(ディール)12トリックで自分が何トリック取れるかを事前に予想する。予想が実際の結果とズレると失点。
- ②カードには二種類ある。スートだけが書かれたカードと数字だけ書かれたカード。
- ③最初、親は手札からスート、数字、それぞれ1枚ずつ、計2枚のカードを出す。親から時計回りに、子も2枚のカードを出していく。スートは必ず従わ(フォローし)なければならない(マストフォロー)。次のトリック(ターン)からは各自1枚ずつ出していく。
- ④ラウンドごとに1つ、切り札となるスートが定められている。
- ⑤規定ラウンドこなして、最も点数の高い人が勝ち。
ゲームの総評
これまた凄いトリックテイキング。なんと1枚のカードにスート(マーク)と数字の両方が書かれて「いない」。スートだけ書かれたカードと数字だけ書かれたカード。この2枚を組み合わせて使う。なんともステキなアイデア。他のトリックテイキングと同様、高い数字を出してトリックを取ったり、スートをフォローしたりするわけだが、実際にその数字とスートが物理的に分離されるため、少しだけ不思議なプレイ感覚が生まれる。doisは、このアイデアを聞くだけでも、プレイする前に結構な驚きと喜びを与えてくれる。
実際にプレイしても面白い。自分の予想がことごとく外れて、勝ちすぎて(トリックを取りすぎて)しまったりする。トリックを取らされる怖さと面白さ。負けている人の言葉にみんなが笑える素朴な楽しさ。スカルキングでもそうだったが、「自分自身を予想することの面白さ」というのは独特なものがある。
スートと数字が分かれていることで、どんな新しいプレイ感覚が生じるのか。それは、断層のようなズレの感覚ではないかと思う。従来のトリックテイキングでは、1つ前のトリックで出したカードは捨てられて、意識の奥の方に追いやられてしまう。意識は常に今のトリックに注がれる。しかしdoisでは、スートか数字のどちらかが、必ず次のトリックにも持ち越される。そのもどかしさ。自分の「一手」を常に半分(数字かスートか)しか変更できない。この更新感覚のズレが、自分の手札のコントロールを難しくさせる。凄いアイデア。そしてトリックテイキングらしい変態さだ。(というかトリックテイキングはどれも変態ばかりというイメージだが)
今回、実際の規定ラウンドより少なめでプレイさせてもらったが、確かに長めにプレイすればするほど味が出てくるような気がする。トリックテイキングの面白さは、成長曲線にあるプレイヤーの意識の変化に依存している。コツが分かり始めたプレイヤーと、「相手がコツを分かり始めたこと」を察知したプレイヤーとの間で、メタな心理のやりとりがある。別に心理戦というわけではなくて、どこか中空の上の方で、相手の意識と通じ合うような不思議な感覚。分かっている者同士の奇妙なコミュニケーションが楽しい。
トリックテイキングはすこし敷居が高い印象がある。やはり良くできたトリックテイキングは美しすぎるからだろう。ファインアートを鑑賞する時の様な気構えというか、ある種の態度が求められる。それはゲームの一部としてプレイヤー自身がガッツリと組み込まれるからなのか、それともルールのシンプルさやテーマの抽象度の高さによるものなのか。理由は色々だろうが、いずれにしろ、僕なんかはトリックテイキングをプレイした後はすこし疲れてしまう。そんな僕でも時々、無性にトリテを遊びたくなる。doisのようなシンプルで美しいメカニクスに触れることで、アナログゲームにハマり始めたころの原初的な驚きに再会できるからだろう。
評価★★☆☆とした理由……そのアイデアの新奇性と面白さは素晴らしいし、ガッツリ考えながらゲームに向かうことことにも心地よい疲労感がある。ただ、トリックテイキング特有の敷居の高さというのは感じる。人によっては何を出せばいいのか分かりづらく「難しい」という印象は否めないだろう。