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2015年7月25日 (土)

【ボードゲームレビュー】アブルクセン ★★★☆

Abluxxen01


評価:★★★☆[3/4](4人プレイの評価です)

プレイ人数:2~5人

プレイ時間:25分


堂々たる現代のクラシック


簡単なゲームの流れ


  • ①手番がきたら、13枚の手札からカードを出す。同じ数字なら、複数枚出すことができる。
  • ②カードが出されるたびに、それより以前の手番で他プレイヤーが出したカードと比較する。比較対象は、同じ枚数を出しているものに限る。(5の3枚セット出したら、それより前に3枚セットを出したプレイヤーと比較する)
  • ③比較した結果、手番プレイヤーの数字の方が大きければ、それより以前に出したプレイヤーのカードは出した本人の手札に戻さなければならない。
  • ④手札を元に戻さず、捨て札にして、新たに山札から同枚数のカードを補充させることもできる。いずれにしろ、比較されて数字が低いと出した分の枚数が手元に戻ってきてしまう。
  • ⑤誰かが手札をなくしたら1ラウンド終了。自分の前に出したカード枚数と手元に残った手札数の差異が点数。規定ラウンド後、もっとも得点が高い人が勝ち。

Abluxxen02



ゲームの総評

この圧倒的に魅力のないイラスト。しかし評判がすこぶるいい。プレイする前からこんな状況だと逆に興味を持たないではいられない。


本作はインターナショナル版では『Linko』というタイトルになっている。"Linko"は英語ではない。「山猫」という意味のエスペラント語だ。山猫は英語で"lynx"。カードの箱に描かれる動物は山猫なのだろう。原題である『Abluxxen』は、ドイツ語の"abluchsen(盗む、かすめとる)"のもじりであり、こんな単語はドイツ語にはなく、つまり造語である。そして"lynx"のドイツ語にあたるのは"luchs"。原題では"luchs"の部分が"luXX"になっている。一度ドイツの人にこのタイトルの持つニュアンスについて聞いてみたいところだ。


なお、英語へのローカライズの際に、"lynx"という単語は使うことはできなかったそうだ(こちらのサイトには作者クラマーの言として、その単語は"not free"だったからタイトルに使えなかったと書かれている。経緯はよく分からないが、デジタルゲーマー的には1989年発売のAtari Lynxを想起してしまう。関係ないと思うが)。いずれにしろ、インターナショナル版にはエスペラント語の"Linko"が充てられた。人工言語エスペラント語を造語のタイトルに替わって充てるというのは、確かに筋が良いかもしれない。


と、そんなタイトルにまつわる雑学はその程度にしよう。さて、実際にプレイしてみると本作、前評判通りめちゃ面白い。場にぐるぐると回る渦が生まれる。連鎖的に自分の出した手が、進行方向と逆順に影響を及ぼしていく。そんな渦。同じ枚数を出したら、数字の大きい方が勝ち、負けたほうが手札が戻ってきてしまう。誰かが出す度に、これまで出されたカードと比較が行われる。同じ数字なら一度に何枚も出せるので、同時に多くの枚数を出すことで比較されずらくなる。つまり、数字が小さくても手札に戻ってくる確率が減る。しかし、同じ数字のカードを何枚も集めることは、手札を増やすことになり当然ゴールから遠ざかることになってしまう。うん、実にゲームとしての勘所が分かりやすく、筋が通っている。しかし、ままならない、うまくいかない、悩ましい。素晴らしい。


ルールは最初聞くと少しややこしく感じる。フローチャートで書いてみると分かるが、数字比較後の場合分けの手順が意外に多い。しかし「手札をなくすのがメインの目的で、弱い手札は出しても、手元に戻ってきてしまうことがある」という基本が分かれば、すんなり飲み込める。このシンプルな方針と、意外に多岐にわたる選択肢の共存こそがこのアブルクセンの特徴である。カードゲームにしては「重い」。そしてその「重み」こそが魅力だ。


不思議に思うのは、なぜこれだけ無数のカードゲームが出ているのに、このアブルクセンには独特の堂々とした「重み」を感じるのだろうか。作者のクラマーの名前がそう感じさせるのだろうか。


この作品は大理石から削りだされた石像のよう。完成品としての像は既にその「中」に存在しているが、多くの凡人にとってそれは単なる石の塊にしか見えない。しかし天才にはその塊の中にある完成品を見出すことができるのだろう。完成品を見る私たちにとっては、ずっと昔からそうあったものが、今ここにあるべくしてあるように見える。


数字に属性があるわけでもなく、本当に単なる数字でしかない(色にさえ意味がない!)。トランプより属性が少ない。ドライで飾り気のない数字の組合せで、ここまで複雑な駆け引きを実現してくれていることに驚く。この辺りが本作の風格の正体なのかもしれない。


カードゲームとしては、えらく枚数が多い。最初の手札が13枚というのも多く感じられる。プレイしやすさという観点から考えれば、配るのもハンドリングするのも少し面倒だ。アブルクセンは決して複雑なゲームではないが、「誰でも楽しく、気軽に遊べる」なんてコンセプトではない。その無骨さが味になっている。正しいゲームを作るのだ、という堂々たる姿勢がかっこいい。


新作でありながら、時の試練を乗り越えてきたような風格を持つアブルクセン。おそらく何回かプレイするごとに段々と上達できるという学習の喜びも持ち合わせている。名作だと思う。ただ、渋い。



評価★★★☆とした理由……すばらしい作品。しかし渋い。ゲーマーとやりたい一品だ。悩んだが、★3とした。やはり自分にとってかなり面白いかったからだ。他人がカードを出している時も楽しい。軽さと重さのバランスがちょうど自分に合っていた。

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