【ボードゲームレビュー】インカの黄金 ★★☆☆
評価:★★☆☆[2/4](6人プレイの評価です)
プレイ人数:3~8人
プレイ時間:30分
シンプルの難しさ。
簡単なゲームの流れ
- ①各プレイヤーは探検家。「進む」か「戻る」かを毎回選択する。
- ②前プレイヤーの選択が公開したら、探検カードを1枚めくる。お宝が出たら、そのお宝を「進む」を選んだプレイヤーで山分けする。余りは、探検カードの上に置いておく。
- ③「戻る」を選んだプレイヤーは、余りとして探検カードの上に置かれたお宝を獲得できるが、一度「戻る」を選んでしまうと以降同ラウンドではアクションができない。
- ④探検カードの中には危険カードがある。同じ種類の危険カードが2枚めくられると、即ラウンドが終了し、それまでに「戻る」を選んでなかったプレイヤーはお宝を失う。
- ⑤最も多くのお宝を入手できた人が勝ち。
ゲームの総評
選択肢は単純。遺跡の奥に「進む」か「戻る」かの二択。進めば危険と共に更なる宝の山が、戻れば安全が手に入る。とても分かりやすいパーティゲームだが、個人的には、ある1つのルールが気に入っている。それが「宝石の山分け」に関するルール。獲得した宝石を「進む」を選んだプレイヤーで配分した後、余ってしまった宝石は残留する。この残留分が「戻り」を選んだプレイヤーの収入になる。よくボードゲームでは均等に割った後の「余り」が発生することがあるが、その余りを単純に「切り捨て」るのではなく、後の展開を盛り上げるための材料として活用する。とても些細な話ではあるのだが、この「余り」ルールが好きだ。プレイ人数が多ければ、余りの数も増える。チキン野郎になって「戻る」を選ぶことがより賢い選択にもなる。
本作は非常に楽しく遊べるパーティゲームではあるのだが、意外に考えるキッカケが色々と用意されている。先ほどの「余り」ルールもそうだが、危険発生の確率をどのように見積もるかというのも考えどころ、計算のしどころである。単なる運ゲーではなく、もう少しボードゲーム的な「ぽさ」がちゃんとある。しかしこの「ぽさ」は単に存在していればいいというものではない。こちらのブログ記事(ひだりの灰色)のレビューで指摘されているとおり、「やることの単純さと、それに伴う手続きの煩雑さがつり合ってない」というのはまさにその通りであると思う。本作はどこか「面白いのだけど、惚れるほどでない」というモヤモヤを感じさせる。
しかし一方で、この若干の煩雑さというか、複雑さがこの「インカの黄金」を少し特別にさせているようにも思う。人によっては、その点に魅力を感じる場合もあるだろう。本作のようなパーティとストラテジー、どっちつかずの「中途半端さ」は時にテーマを支える魅力に化学変化することがありうる。
ノリで遊ぶことももちろんできるけど、考え始めると意外に合理的にプレイすること「も」できる。実際にそう楽しむかどうかは置いておいて、そういう可能性が担保されていることのワクワク感。「シンプルなのに、色々考えどころもある!」なんて、もはや凡庸すぎて、場合によっては苦笑をもたらす言い回しなのかもしれない。本作はその混ざり具合がある意味不器用なのかもしれない。だが、だからこそ、何か心に引っかかる。「インカの黄金」はギリギリのところでそんな「引っかかり」を達成しているような気もするのだ。遺跡発掘のロマンと、シンプルさをいい具合にかき混ぜるシステム/メカニクスのわかりやすい存在感。「インカの黄金」はそういう意味で、システムとテーマのトータルで意外に魅力を持っているゲームではないか。店頭でこのゲームを目にした時に心の中で微かなざわめきのようなものを感じる。ボードゲームをよく知らない友人に聞かれたら、「結構面白いゲームだよ。盛り上がるよ」と勧めてしまいそうになる。
正直ベタぼれするようなゲームではない。しかし「インカの黄金」はなぜかボードゲーム売り場の一角に常に存在していてほしい、そんなゲームだ。
評価★★☆☆とした理由……子供と遊びたいファミリーゲーム。テーマが個人的に好み。シンプルだけど、悩む楽しさも分かりやすく味わえる。楽しく盛り上がれるが、一生懸命に勝とうとプレイするとなんか違うんじゃないかと冷静になってしまうという妙なジレンマを感じさせる。