ニコ生で2月18日19:30からプロ将棋棋士たち11人による人狼大会『
将棋棋士の人狼』が放送された。これが異常に面白かった。備忘録として、ダイジェストをメモとして書いた。あの熱戦を文字だけで伝えるのは難しい。まあ、振り返りのために読んでいただければ幸いだ。
ほとんど記憶だけで書いているので、間違いが色々あるだろう。また僕自身の印象フィルターが掛かっているため、重要なシーンが抜けている部分もあると思う。その点は留意願いたい。また誤りに気付いた方は指摘いただけると嬉しい。
なお、3/27にフジ系列で放映された「人狼~嘘つきは誰だ?~」のダイジェスト記事は
コチラです。
今回使われた役職
市民、人狼、占い師、霊媒師、騎士、多重人格
※市民はいわゆる村人。
※多重人格はいわゆる狂人。
※騎士はいわゆる狩人(猟師)。
※多重人格は2戦目以降に導入。
※2戦目以降、1日目は人柱くんが必ず襲撃される。しかし人柱くんは何かの職業を持っている可能性がある。(人狼BBSでいうゲルトにランダムで職業が割り当てられる感じ)
全体の流れ
①役職決定
↓
②みんなで議論
↓
③個別尋問タイム:誰かを指名して質問⇒処刑対象の投票。この流れを1人ずつ全員分繰り返す
↓
④処刑:最多同数の場合は弁明+決戦投票。
↓
⑤夜のターン
占い師は対象選定および結果確認。
霊媒師は死亡者の判定を確認。
騎士は護衛対象の選定。
人狼は殺害対称の決定。
市民は疑わしいと思う人を1人選択。
市民から「疑惑を最も集めた人」が翌日ゲームマスターから伝えられる。これを推理の端緒とする流れ。
※個別尋問タイムの存在が少し特徴的か。
試合は全部で3戦行われた。では、以下、試合のダイジェスト。ネタばれ満載なので、タイムシフト予約している方は、放送を最初に観た方が面白いと思う。
■第1回戦(全11人、狼3、占1、霊1、騎1)
主な登場人物※下記リンク先は日本将棋連盟の棋士紹介ページ
全体の雰囲気
初めてとあって固い雰囲気。一人異彩を放つのが中田7段。
ダイジェスト
狼の村中6段が占い師として最初にカミングアウト(以下、CO)。一方本物の占い師である瀬川5段はすぐにはCOせず。これで村中6段は、みんなからの信頼を一気に勝ち取ることに。全員での議論を終えた後、個人ごとの尋問タイムでようやく瀬川5段が占い師CO。瀬川5段のCOのタイミングが悪すぎて、みんなが偽物の村中6段を更に信用する事態に発展する。
残りの狼である山口女流初段と藤田女流初段は、寡黙になり潜伏。
場を仕切る力のある中田7段が早い段階で喰われる。中田7段は相当予習してきたようで、ちゃんとセオリーを把握している模様。市民側としては中田7段死亡は相当の痛手。狼側GJと言ったところだろう。
本物占い師の瀬川5段が偽物の村中6段へ攻撃を繰り返すが、ことごとく村中6段の素晴らしいロジックによって返り討ちにあう。市民側は苦しい展開。本物なのに全く信用されない悲しい瀬川5段。みんなの頭の中では、完全に「瀬川5段は狼」という意見で固まってしまった。そして村中6段(狼)は、場を完全に支配した。
結局、信頼を勝ち取れないまま瀬川5段が処刑される。挙句には騎士まで人狼に殺される始末。これは市民側の負けか、視聴者はみなそう思っただろう。狼は相変わらず潜伏を続けている状態。やはり寡黙な女性は有利だ。
片上6段(市民)の推理が常に的外れ。しかし発言が堂々としているため、その場の流れを作ってしまう。村中6段はそれを見て、うまいこと片上6段の誤った推理を補強していく。つくづく村中6段が強い。片上6段は滑稽なピエロと化す。しかし村中6段は順当に処刑され、片上6段も目立っていたせいか襲撃を受ける。
最終盤、もはや狼勝利に終わらんとするまさに瀬戸際。貞升女流1級が霊媒師CO。続いて、村中6段が狼であったと発言。ここで千葉6段(市民)が突如覚醒する。霊媒師により「実は、村中6段は狼」との判定があったとは言え、これまでの支配的な空気をぶち壊して村中6段を疑うのは中々難しいはず。しかし、千葉6段は冷静に村中6段に疑いの目を向ける。そして、的確な読みを感じさせる発言。市民劣勢の状況をギリギリのところで、もはや消えかかっていた市民側の勝機を再生させる。
しかし、霊媒師の貞升女流1級は、場の空気を動かすほどの説得力を持てない。千葉6段が最後の選択。2択。狼に処刑投票すれば、市民側を十分に勝利に導ける状況!
……しかし、最後の最後で、千葉6段は霊媒師である貞升女流1級を処刑対象に指名。市民側の敗北が決定。貞升女流1級は正しい発言をしていたが、信頼を勝ち取れなかった。
結果:人狼勝利
感想
瀬川5段のCOが良くなかった。しかし迷いがあったのだと思う。その気持ちはよく分かる。後追いのCOは勇気がいる。初心者の時は躊躇してしまうもの。ちょっと間を置きたくなったのは理解できる。
いずれにせよ村中6段の占い師騙りが上手かった。見事。どんなに突っ込まれても、冷静かつ論理的に答えた。ほとんど疑う理由がない。
ハイライトは千葉6段の覚醒。千葉6段には全貌が見えたように視聴者は思ったはず。けれど、劇的な逆転は起きなかった。とはいえ、起伏のある面白い試合だった!
さすが棋士の方々。とにかく飲み込みが早い。どんなに疑っていても、論理的な応対にはちゃんと理解を示す。逆に言えば、理屈に弱い、ということかもしれない。これは面白くなりそう。
途中、「女性コワイ」コメントがあふれたが、女流棋士はとても素朴に、そしてうまくプレイしていたように思う。
■第2回戦(全12人、狼2、多1、占1、霊1、騎1)
主な登場人物※下記リンク先は日本将棋連盟の棋士紹介ページ
全体の雰囲気
初の多重人格(狂人)の導入。女性も疑うべき、という空気がちゃんと生まれる。
ダイジェスト
しょっぱな、片上6段が占い師CO。先ほど市民側をミスリードしまくったことをちゃんと踏まえて推理を展開しようとしている。他に占い師のCOがなかったので片上6段の占い師確定。これは市民側有利。
一方狼は、比較的寡黙な瀬川5段と藤田女流初段。彼らとしても騙りをする自信がなかなか出なかったのだろう。対抗COはなかった。
視聴者全員が「今回の要は村中6段の多重人格」と思ったはず。しかし、1回戦の見事すぎる占い師騙りにより、周りからの信頼度がゼロ。ただ、村中6段の「私をぜひ占ってほしい」という発言はうまい。経験者からしたら怪しすぎるかもしれないが、いずれにしろ、多重人格は占われてナンボ。
しかし、村中6段、今回は騙りをする暇もなく、処刑されてしまう。前試合の尾を引いてこそリアル人狼。これこそリアルに対面でやる人狼の面白み。
やはり場を仕切るのが、予習をしてきた中田7段。非常に的確な読み。異常な勘の鋭さで見事に狼を的中。しかも、自分が処刑対象になるとき「私は処刑されても構わないが、私を指したのは誰か、みんな覚えておけ!」という素晴らしい遺言。これは狼としてはプレッシャーだろうし、情報の印象付け方としては極めて正しい。初プレイとは思えないほどに、人狼をちゃんと理解している。
しかし、結局中田7段は処刑されず、生き残り。これは市民側よかった。
処刑を生き延びた中田7段だったが、翌日の夜のターンで人狼に襲撃される。とにかく「速く」論理的な意見を述べられる人は、狼にとって非常に厄介。セオリーを知るとはスピードを得るということだ。これは狼側のナイス襲撃。
そして終盤。満を持して及川5段が霊媒師CO。視聴者が盛り上がる。面白いぞ、棋士人狼!霊媒及川5段は、前日処刑した瀬川5段が狼だったとの宣言。
白確定が増えていく展開。狼側が追い詰められる状況で、とうとうラスト狼である藤田女流初段に疑いがかかる。これは役職騙りしかない……。ここで藤田女流初段は騎士騙りをする。まあ、それしかないだろう。
藤田女流初段のCOに、占い師兼ミスリーダー片上6段が悩みまくる。なんか微笑ましい。本戦2戦目の最初の方でも、間違った勘を表明していた片上6段がカワイイ。よく喋るミスリーダーほど怖いものはない。
しかし、最終的には狼である藤田女流初段を処刑。市民側が順当に勝利。終わってみれば、結構僅差だった。
結果:市民勝利
感想
多重人格の村中6段も、人狼の瀬川5段もほとんど活躍しなかったにも関わらず、なかなかの接戦。狼の藤田女流初段にはいくつかミスもあったが、疑われにくい空気が醸成されていた。一番悪いのは、ことごとく勘の外れる片上6段だったかもしれない。なお、最初の人柱が抱えて死んだ役職は騎士。これもなかなか良かった。しかし、占い師や霊媒師の対抗COが出なかったのは少し残念だった。
1回戦に続き、2回戦目も非常に見ごたえのある試合。人狼がこんなにも観てて面白いものだとは思わなかった。
■第3回戦(全12人、狼2、多1、占1、霊1、騎1)
主な登場人物※下記リンク先は日本将棋連盟の棋士紹介ページ
全体の雰囲気
視聴者も役職が分からないという趣向でスタート。疲れてきたのか全体的に静か。中田7段だけ元気。
ダイジェスト
いきなりの中田7段の霊媒師CO。この行動で一気に場が動く。そして、藤田女流初段が占い師CO。そんなに早くCO?と思ったが、なんとここで対抗COがいない。視聴者としても、とりあえず占い師(藤田)と霊媒師(中田)を信じるしかない状況。
そして、占い師の藤田女流初段が襲撃され、いきなり死亡。なぜ騎士は護衛しなかったのか?!もしかしたら、前試合に引き続き、騎士は人柱が抱えて死んでしまったのか?という疑念が広がる。
霊媒師である中田7段が、死亡者の判定結果を述べながら、場を支配する。このまま中田7段を信じていいのか?とみんなが疑心暗鬼。不気味なのは、1回戦で見事な占い師騙りを見せた村中6段がずっと静かなこと。
中盤、静かだと思っていた村中6段に処刑の投票が集まる。これ、視聴者はみんな村中6段、死んだ!と思ったに違いない。ここから華麗な村中6段の復活劇。
「自分は市民であり、役職もないので、死んでも構わない。しかし、より怪しい人間を処刑した方がいいだろう。」論理の筋としてはとてもオーソドックス。変なことは何も言っていない代わりに、大したことを言っているわけでもない。しかし紡がれる言葉が流暢かつ論理的で、みんな納得してしまう。決選投票でなんと村中6段生き残り。代わりに安食女流初段が処刑。なんという巻き返し。なんという説得力。
この見事な発言により、特に経験者である視聴者は、むしろ村中6段への狼の疑いを強めたのではないか。しかし、霊媒中田7段による安食女流初段の狼判定。結果としては、狼である安食女流初段を処刑したことで、市民側が試合を有利にする。しかし、セオリーを知る中田7段の狼判定を信じていいのか、と疑う人もいて、場は混迷を極める。
霊媒中田7段による白確定が増えるものの、残り1匹となった狼が見えない。若干の膠着状態。
しかし、ここで試合は意外な展開を見せる。なんと終盤で人狼の襲撃が失敗。つまり騎士による護衛が成功したのだ。
場が一気に沸き立つ。騎士GJの視聴者コメントがあふれる。護衛成功以上に、ここまで騎士が生き残ってきた事実にみんなが驚愕した。
そして、及川5段による騎士CO。ずっと霊媒師である中田7段を守ってきたとのこと。対抗COが現れないので、及川5段の騎士確定。よくよく考えれば、初日にCOした占い師の藤田女流初段を護衛しなかったのも、護衛されやすい占い師を襲撃に行かない、という読みによるものだったのかもしれない。
ようやく霊媒師による白確定と騎士COにより、狼が絞られる。まだ判定が下っていないのは、貞升女流1級と山口女流初段の二人。女流棋士の一騎打ち。
両者ともなかなかに冷静。貞升女流1級の素朴だが、論理的な発言が光る。山口女流初段が若干不利か。
最後には山口女流初段が処刑される。そして、市民側の勝利が確定した……。
結果:市民勝利
感想
結局役職は以下の通り。中田7段(霊媒師)、山口女流初段(狼)、安食女流初段(狼)、及川5段(騎士)、藤田女流初段(多重人格)、及川5段(騎士)、人柱(占い師)。
なんと最初の人柱が占い師を抱えて死亡していた。本物の占い師がいない状況で見事市民が勝利するというとても良い試合。ハイライトは何と言っても終盤での護衛成功。全体としては意外に地味な展開となった。多重人格の活躍が見れなかったのは、返す返すも勿体ない。多重人格の藤田女流初段は1日おいてから、占い師CO(占い師騙り)した方が良かったか。いや、むしろ狼が焦って占い師喰いに行かなかった方がより接戦となったかも、と言うべきか。
いずれにしろ、視聴者としてもなかなか場が読めず、面白い展開だった。(僕は終盤までずっと中田7段を狼と疑っていました。)
全戦通して観た感想
人狼観戦は面白い。とてもいい放送だった。ただ、役職は分かった上で観た方が、人狼観戦は面白いかもしれない。これは少し意外な感触でもあった。当初自分は、役職は分からないで観る方が楽しいのではないかと思っていた。もちろん一緒に推理を楽しむのもいいが、プレイヤーたちの勘違いや鋭い指摘に一喜一憂しながら観戦するのがとても楽しい。しかし全体としては、とてもメリハリの利いた良い企画だったと思う。
あっという間の4時間(!)だった。ニコ生においても、是非続編を希望するが、あまりマメにやってはダメだという気もする。気持ちとしてはもっと観たいのだけど、この企画は、1年に1回ぐらいが良いのではないだろうか。